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成層回転乱流の数値計算と大気スペクトル:
成層乱流におけるエネルギーカスケードに関する数値的研究とそのメソスケール大気への適用

松田 佳久(学芸大・地学)
2004 年 3 月 23 日
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2 次元乱流と 3 次元乱流

3 次元乱流
  • 慣性領域でエネルギーが保存
2 次元乱流
  • 慣性領域でエネルギー, エンストロフィーが保存
問題点は....
  • -5/3 乗則が出てきたら, どちらと判断すればいいのか?
  • 成層効果があれば 2 次元的と思って良いのか


タイトルページ


はじめに
  • 500 km のスケールで巾乗則が変わる


観測の絵


数値シミュレーションによる再現
  • ちょっと見てもわかりにくいけど, 折れ曲がりを再現している


巾乗則の成因に関する議論
  • 高波数をどう判断するかが大問題
  • 2 つの解釈ができる


力学モデルを用いた数値実験による検証
  • 安定成層の効果で 2 次元乱流的にならないか
  • 現状では逆カスケードで -5/3 乗則がでたということはない


Metais et al (1994)
  • 気象の状況とは全く異なる
  • 成層と(ものすごく強い)回転がなければ, 逆カスケードが見られる


研究の目的
  • GCM を使うと -5/3 乗則が出て来る
    --> しかし何が原因で何が結果かわからない
  • 現実的な GCM を用いると, いろいろなスケールでエネルギー注入が起こっているので原因と結果を切り出すことが困難
  • 簡単なモデルを用いる
    --> 力学的プロセスを抽出
  • 乱流のパラメタリゼーションの改善


モデルの方程式


数値計算の方法


強制の与え方
  • 2 つの仮説に対応する強制
  • Type1: upward cascade を念頭
  • Type2: downward cascade を念頭


散逸項について
  • LES に基づいて渦粘性係数を決定する
  • 格子点から表現できる物理量でサブグリッドスケールの運動を表現
  • 成層の効果を考慮
    • 水平方向にも鉛直方向にも同じように成層の効果考慮する
    • 水平方向には成層の効果は入れないほうがよいのでは?
  • 渦粘性に F(Ri) を加えたことが特徴. 成層の効果を取り込む
  • 水平には F(Ri) を入れない方が良い?


エネルギースペクトル(type 1)
  • L=20 km スケールにエネルギー注入,
  • 成層を変化させて計算(横方向)
  • 回転速度を変化させて計算(縦方向)
  • 左上図のピークの位置がエネルギー注入スケール
  • 実際の地球の条件では(ブラントバイサラ 10 分, f = 2 Ω), -5/3 乗のアップワードカスケードは起こりにくい
  • 地球の 10 倍の自転速度だと, -5/3 乗に近づく. 回転の方が重要そうだ.
結論としては, type1 の強制では -5/3 乗則を満たすのは難しい. 但し, 回転を早くすればなんとかなる


領域平均した Rossby 数と Froude 数
  • 地球の自転パラメータではロスビー数はあまり小さくない
    • あまり 2 次元乱流にはならないだろう
  • 自転速度を 10 倍にすると, 成層によらずロスビー数は小さい
    • -5/3 乗スペクトルを出すには成層よりも回転が重要
    type1 では -5/3 乗則を満たすのは難しい.


  • エネルギースペクトル(Type2)
    • L=400 km にエネルギー注入
    • どの図も -5/3 乗則を満足しているように見える
    大きいスケールのところにエネルギーを注入するのが良いようだ


    エネルギースペクトルの傾き
    • 観測だと緯度によって変化しない
      --> Ωを変化させて計算


    エネルギー方程式
    • 鉛直方向に積分したものを取り扱う
    • 3 次の非線形項が表れる
    • 非線形項として, 渦モードと発散モードに分解
      --> VVV: triad interaction (3 つの渦が相互作用して運動量を変化)


    エネルギーフラックス


    エネルギーフラックス(type1)
    • マイナスの向きは upward
    • マイナスが少なくて -5/3 乗則まで近付かない
    • Neutral ではほぼ downward


    エネルギーフラックスの内訳(Type I)


    エネルギーフラックス (Type2)


    回転の効果
    • VVV はアップワード
    • VVV 以外はダウンワード傾向


    triad interaction の抽出
    • サブグリッドとグリッドスケールにまたがる場合を評価
    • パラメタライズの必要がある


    グリッドスケールのエネルギー輸送
    • 縦軸: Max wave number
      グリッドの切断波数みたいなもの
    • 横軸: 波数
    • プロットされたものはエネルギーフラックス(max wave number に来る)
    • 色が濃い部分が輸送量が多い部分
    • 三角形のうち, 2 辺の長さがだいたい等しくて, 他が短い triad interaction が重要


    triad interaction の主要部
    • 非常に近い波数間でエネルギーがカスケード
    • その意味でローカルなカスケードが主要な輸送
    • これまでの慣性小領域び議論と整合的


    粘性項から推定されるエネルギー輸送
    • explicit な世界から消えたエネルギー: サブグリッドへ


    triad interaction の主要部
    • 粘性項
    • LES では, 定性的に誤った結果になっているように見える


    散逸量の波数分布
    • 散逸に寄与する波数を, パラメタリゼーション毎に見る
    • 波数が小さい方が散逸しやすい
      --> 波数が小さい方がエネルギーを多く持っている.
    • S-L は高波数で破綻


    水平粘性係数の空間分布
    • 空間的に一様でない
    • パラメタリゼーションによって空間分布が変化


    エネルギースペクトル
    • S-L は高波数側で E(k) が増加


    まとめ (1)


    まとめ (2)


    まとめ (3)


    今後の課題


    参考文献
    • Charney, J.G., 1971: Geostrophic turbulence, J. Atmos. Sci., 28, 1087--1095.
    • Koshyk, J.N., Hamilton, K., Mahlman, J.D., 1999: Simulation of the k/sup -5/3/ mesoscale spectral regime in the GFDL SKYHI general circulation model, Geophysical Research Letters, 26, 843-846
    • Koshyk, J. N., K. Hamilton, 2001: The Horizontal Kinetic Energy Spectrum and Spectral Budget Simulated by a High-Resolution Troposphere-Stratosphere-Mesosphere GCM, JAS, 58, 329--348
    • Metais, O., Riley, J.J., Lesieur, M., 1994: Numerical simulations of stably stratified rotating turbulence. pp.139--151, in Stably-stratified flows --- flow and dispersion over topography. Eds. I.P. Castro and N.J. Rockiiff. Clarendon Press.
    • Nastrom, G.D., Gage, K.S., 1985: A climatology of atmospheric wavenumber spectra of wind and temperature observed by commercial aircraft, Journal of the Atmospheric Sciences, 42, 950--960
    • Ueda, H., Mitsumoto, S., Komori, S., 1981: Buoyancy effects on the turbulent transport processes in the lower atmosphere, Quarterly Journal of the Royal Meteorological Society, 107, 561--578


    SUGIYAMA Ko-ichiro & ODAKA Masatsugu 2004-03-23