大気や海洋の問題においてスカラー量の移流を正確に計算することが必 要となる場合がある. 水蒸気混合比や塩分濃度のような正のスカラー量 の移流を計算するときには, 負の値が生じないように計算を進めなくて はならない. 差分法で移流方程式を解く場合, 空間方向に高次の正確度 を持つ差分スキームを用いて計算すると, 差分誤差によって発生した波 により負の値が生じてしまう. 上流差分や低次の差分スキームを用いる と負の値は生じないが, 数値拡散が効きすぎてしまうという別の問題が 発生する.
上記の問題を解決するような移流方程式の差分スキームはこれまでにい くつか提案されている. ここでは Smolarkiewicz(1983, 1984), Smolarkiewicz and Clark(1986) によって提案されている MPDATA(Multidimensional Positive Definite Advection Transport Algorithm) という差分スキームについて簡単に解説する.