放射MTGメモ(2015/12/21)

参加者

  • 石渡雅樹, 高橋康人, 齊藤大晶, 大西将徳

系外惑星放射計算プログラムの開発 (大西)

  • ハビタブルゾーンの内側境界に関する先行研究の評価 (特に k 分布法による放射計算の精度の観点から) を行った.
    • 先行研究の評価
      • Kasting+1993, Kopparapu+2013 (古典的研究): 1次元等温成層圏モデルで内側境界を推定.
        • モデル: 1-D モデル, 雲なし. 200K 等温成層圏を仮定.
        • 結果: 暴走温室限界 (0.84, 0.97AU), 水損失限界 (0.95, 0.99AU).
        • 評価: 水損失限界の議論のうえで, 200K 等温成層圏の仮定は大胆. 成層圏温度が何度になるかを推定すべき.
      • Kasting+2015: 1次元放射対流モデルで成層圏温度を推定.
        • モデル: 1D radiative-convective climate model, k分布法, 雲なし, N2 1bar, CO2 355ppmv (O2, O3 なし).
        • 結果: 地表面温度340K で, 成層圏温度は 150K 程度. 成層圏温度は地表面温度とともに上昇.
        • 評価:
          • 地表面温度 290, 320K の温度プロファイルは, 成層圏の温度ががたがたしている. このがたがたは吸収断面積の精度の悪さを反映していると考えられる.
          • k分布法の詳細も記述が無く, 明らかでない(: k分布法の精度も十分でない可能性が高い, おそらく LMD のKDISTRIBUTION を使っている)
          • 地表面温度 350K のプロファイルは, 対流圏界面 (?) より上空の温度が計算されていない.
            • このプロファイルの上空の温度構造は, 水損失限界の閾値と直接関係しているにもかかわらず, 中途半端にきれている.
          • 地表面温度が高くなると(370Kなど), 大気中の水蒸気量が多くなり, 灰色モデルに近くなるために成層圏温度が200K に近くなると説明. この解釈はおかしい(?)
      • Leconte+2013: 3次元モデルで内側境界を議論, 成層圏は cold & dry であり, 水損失限界は無い.
        • モデル: 3-D climate model, 雲あり. N2 1bar, CO2 376ppmv, H2O. k分布法 (惑星放射19bands, 太陽放射 18bands, g-space: 16points.)
        • 結果: 成層圏は 140K 程度, runaway greenhouse at 0.95AU with no moist greenhouse.
        • 評価: k分布法の精度が不十分(?).
      • Wolf & Toon, 2015: 3次元モデルで内側境界を議論, 水損失限界の存在を主張.
        • モデル: 3D climate model, 雲あり. N2, CO2 367ppmv, H2O. k分布法 (28bands, g-space: 8 or 16points)
        • 結果: 0.92AUで water loss limit
        • 評価: k分布法の精度が不十分(?). 地表面温度が高温の場合に地表面付近に現れる温度逆転層は何か(?)
    • k分布法のサブグリッドの数と加熱率の計算精度の考察
      • k分布法において, サブグリッドをどれだけ区切れば計算精度がどうなるか検討した.
        • 成層圏大気の放射による圏界面の加熱率で検討を行う.
        • 等温成層圏, 散乱なしの仮定による加熱率を line-by-line 計算と k 分布法による計算で比較.
          • k分布法の吸収断面積 kg_i と積算確率 delta_g_i の計算方法
            • line-by-line 計算による吸収断面積を並べ替えた積算確率空間で, 吸収断面積を対数等間隔に N 等分する.
            • 吸収断面積の度数分布にあわせて delta_g_i を求める.
            • kg_i は, N 等分した境界の吸収断面積の対数平均とする.
          • 計算波数領域: 0 - 340 cm-1 (波数分解能: 0.0001 cm-1)
          • k 分布のサブグリッドの数 N: 8, 16, 32, 64, ..., 1024, 2000
        • 結果
          • 相対誤差が 1% を下回るのは N = 512 以上.
        • 考察など.
          • 先行研究では, N = 8 or 16 程度.
            • ただし先行研究は, k 分布の吸収断面積について, 本考察のような単純な与え方ではなく, チューニングを行っているはず.
          • 今問題としている高温成層圏の計算にはどの程度の計算精度が必要か.
            • 地表面温度 320K の場合 (高温成層圏存在しない), 10% 程度惑星放射の加熱率が変わると高温成層圏が計算されてしまう.
          • N を大きくするほど相対誤差が小さくなることが予想されるが, そうなっていない場合がある: 計算の検証必要.
    • To Do
      • 先行研究の評価について, もっと具体的に不平不満を並べる.
  • mtg 資料

木星大気の放射計算 (高橋康)

  • 放射モデル
    • 波数解像度を上げた計算による圏界面高度の推定
      • 波数解像度を上げると(1cm-1 から 0.01cm-1), 圏界面高度が変わることが明らかとなった.
        • 1cm-1 計算によって決定した温度プロファイルをもとに, 0.01cm-1計算を行うと, 圏界面での加熱率分布が変化する.
      • 圏界面の位置を 0.38bar から, 0.39bar に上げて0.01cm-1 計算を行った.
        • 0.38bar から 0.39bar の間で, 加熱率の正負が逆転.
        • 変化の幅が大きいので, 圏界面付近のグリッドを細かくして計算行った.
          • グリッドを細かくした領域で加熱率に大きなとびが生じてしまい, 計算の検証中.
        • 0.38bar から 0.39bar の間に圏界面があることが示せればそれでよいのではないか.
    • 線吸収の計算精度確認
      • 波数分解能の違いによる放射計算の精度, 内挿の仕方による放射計算の精度を確認しようと思っている.
      • 上記の確認よりも他のモデルとの比較の方が重要ではないか?
  • Letter 執筆
    • イントロと結論の整合性のチェック, reference の再確認を行う.

次回の日程

  • 12/28 (月) 9:00-
  • 年末年始の日程
    • 12/28 (月), 1/4(月) は通常通り行う予定.