4. 計算結果: ダストのある場合 up previous next
4.a. ダストの混合の様子 (1)

図 10a: 巻き上げ 1 日目のダスト混合の様子. LT = 11:39 〜 18:00 の 10 分毎の結果. (上段) ダスト混合比 (kg/kg). 1.0×10-8 以上の領域に配色. (下段) 鉛直風. 等値線間隔は 5 msec-1.


ダスト巻き上げ 1 日目のダスト混合比の様子を 図 10a (上段) に示す. ダストは対流プリュームにより 2 〜 3 時間の間に速やかに混合される. 巻き上げ開始直後のダスト混合比は上昇域内, とくに対流プリュームの内部で大きな値を持つ. 巻き上げ開始から約 2 時間後の LT = 14:00 にはダストは対流層全域に広がり, LT = 17:00 には高度 10 km 以下のダスト分布は水平鉛直にほぼ一様となる.

ダストが巻き上げられている段階ではダスト混合比の大きい上昇域とその他の 領域との間には放射加熱差が存在しているはずである. しかしこの加熱差は対流の循環パターンにはあまり大きな影響は与えて いないように見える. 対流セルの縦横比が 2:1 程度であり, 上昇域と下降域の面積に大きな差がないこと (図 10a 下段) はすでに示したダストのない場合 (図 4 右上) とあまり変わらない. ダストによる日射吸収加熱の結果, 下降流の強さが上昇流の強さに比べて若干小さくなったようにも 見えるが, 統計的に意味があるかどうか詳細な解析を必要とする 程度である. 総じて, 放射加熱差が対流の循環パターンに影響を及ぼす前に ダストは対流層内全体に行き渡り, 結果としてその効果は弱められてしまうようである. 地表からの巻き上げ時においては, ダストは受動的トレーサー として振舞うと言えよう.


2次元非弾性系を用いた火星大気放射対流の数値計算
Odaka, Nakajima, Ishiwatari, Hayashi,   Nagare Multimedia 2001
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