gtool4は
Fortran90で書かれているために, 地球科学分野の研究者がプログラム・ソースのレベルから理解しやすい.
例えば既存のツールに新しい機能を付け加える際に新しくプログラムを作成するのは手間がかかる. その場合, 追加機能をオブジェクトとして元のプログラムに付け足すだけならば, 効率が良い. そのためgtool4ではオブジェクト指向設計を心がけている.
フリーウェアであることとソースの公開は, プログラムの改良を促進する上で有効である. またフリーであることで研究者のみならず学生が個人レベルで自由に使いこなせることで業界標準で利用されることが期待できる.
地球惑星科学分野において流通する, 既存の数値データフォーマットは, そのデータ自身の諸元や格納される変数の情報等がデータ以外の媒体に書かれている. gtool4形式のデータはデータ自身の性質・情報がデータ自身に内包されている. これにより利用者は, データの詳細が書かれているマニュアルを探すことなく, データ単体で作業を進めることができる.
エンディアン形式, 浮動小数点方式などの数値データの機種間の取扱の違いはデータ共有時の足枷となっている. gtool4ではデータ形式に機種に依存しない様式をを採用している. これにより異なる機種間でネットワークを通じてデータの流通と正確な伝達が可能である. またツールが数値データを参照する際にネットワーク上で共有される資源に直接アクセスすることを考慮し, データの参照名にURI(Uniform Resource Identifiers)を採用している. このようにネットワーク経由でのデータ流通がスムーズに行われることを目標にgtool4ではネットワーク透過性を重視している.
地球科学分野では数値データは可視化されることを前提としている. 数値データの可視化情報を同じファイル内に格納できれば, 過去に自分の作成した図形が確実に再現できる. gtool4では構造体変数という概念を採用し, 可視化情報を変数として元となる数値データに格納することができる. これはgtool4を開発した電脳davisプロジェクトの目指す数値データの構造の最大の特徴である.
上記の特徴を実装の上で重要な位置を占めるのが,gtool4形式のデータの基礎フォーマットであるnetCDFである. 次節ではnetCDFについて詳しく説明する.
netCDFは本来Unidataが自身で提供するアプリケーション共通のデータフォーマットとして開発されたが, 現在では大気科学分野で広く活用されている. 例えばCDC(Climate Diagnostics Center)から配布されている NCEP/NCAR再解析データ は,全てnetCDF 形式になっている. また大気科学以外の分野でも利用されている. 地図作成ツールGMT(The Generic Mapping Tools)がその1例である.
現在代表的なnetCDF規約としては COARDS規約, NCAR CMS規約, GDT規約が挙げられる. それぞれの規約は規定する団体の研究する分野の事情を反映している. 例えば上述のCOARDS規約は気候・気象データを想定した規約であり, NCAR CMS規約は特に気候数値モデルを想定して開発された規約である.
gtool4規約は多次元数値データと可視化情報を自己記述的に格納することにに焦点がおかれた規約である. 言い替えるとgtool4の特微である可視化情報と数値データの統合, ならびにデータの構造化はgtool4規約によって成立しているのである.