「TRMM Rain Data set」は熱帯域降雨の3次元空間分布を格子点データとして格納している. 降雨の3次元空間分布は大気の潜熱による加熱分布を知る上で重要である. また, 取扱の難しいTRMM衛星の標準データフォーマットであるHDF形式ではなく, 汎用のバイナリフォーマット形式を採用している. そのため衛星データの扱いに不慣れな研究者が利用しやすい仕様となっている. 一方でバイナリ形式は非自己記述的なデータなために, 大量のデータを扱う際には手間もかかり, 使い勝手が悪い.
上記の問題はgtool4を利用することで解決される. 「TRMM Rain Data set」のデータ構造を持つnetCDFファイルをgtool4規約にしたがって作成すれば, 変数の単位や空間構造に関する情報をファイル自身に内包できる. また機種依存しないデータ形式はネットワーク上でのファイル共有を容易にする. さらにgtool4の可視化機能を利用して, 簡単に変数の断面図を作成することが出来る.
本論文では熱帯域降雨特性の把握に必要なデータの解析作業や気象力学的な理論づけなどは行っていない. データセットから得られた降雨分布データの緯度平均や時間平均の導出, および地表面からの外向き長波放射分布やSST分布と相関をとるなどして, これらの示す性質の理解を深める必要がある.