GAVE は西澤によって開発されている多次元データ解析・可視化ソフトウェアであり, 電脳 Ruby プロジェクトで開発された解析・可視化のためのライブラリを統合的に利用することができるユーザーインターフェースである. 図1 は GAVE を使用して可視化を行っている際の画面である. 扱うことのできるデータ形式は netCDF[13] である. バージョン 1.0.0-beta5 では GrADS のデータ形式も扱えるようになっている.
以下では GAVE の特徴を次の3つに分類し説明する.
GAVE のユーザーインターフェースは GUI である. GUI の長所は手軽で対話的な操作性である. 描画した絵に対話的な操作で逐次修正を加えることができるため, データが持つ特徴をより明確に表現することが可能になるだろう. また, GUI は視覚的に機能を把握することができるためキャラクターユーザーインターフェース(以下 CUI) のソフトウェアようにコマンドを覚える必要がない. よってソフトウェアを習得するまでに長い時間を要さない. また, GAVE の GUI は日本語に対応している. 英語が母国語としない日本人にとって日本語のユーザーインターフェースを持っていることはより機能の把握を楽にする.
バッチ処理やルーチンワーク, または可視化を再現することを考えると, 一般に GUI は CUI に劣る. しかし GAVE はこの点を解消する機能を持っている. その機能とは可視化を再現するスクリプトをファイルに保存することができるという機能である. このスクリプトは Ruby スクリプトであり, このスクリプトとデータから可視化を再現することができる. またこのスクリプトを雛形として各々必要に応じて修正すれば, 様々な工夫ができる. 例えば GAVE が未実装の機能を実現したい場合はスクリプトを修正することで解決する. また, この雛形をループ(繰り返し構造)に閉じ込めファイルを順次与えるような処理を記述すれば, 複数のファイルに同様の処理を行うスクリプトを簡単に書くことができる.
電脳 Ruby プロジェクトの製品は基本的にソースが公開され, 改変することも可能である. GAVE も電脳 Ruby プロジェクトの製品であるため同様のことが言える. 商用のソフトウェアなどソースが公開されていないソフトウェアにおいて, そのソフトウェアに実装されていない機能が必要である場合は, 開発が進むのを待つかあきらめるしかない. GAVE はソースを自由に改変することができるため自分で拡張することが可能である. 例えば GAVE は現在, GAVE が利用するライブラリの機能の全てを使えるようになってはいない. そのため目的の機能に対するインターフェースを作成することで機能拡張を行うことができる. GAVE の記述に Ruby が使われているため拡張での手間がかからない. .
GAVE は地球流体科学の研究を想定して作られているため地球流体科学にとって便利なな機能をもつライブラリを呼び出すことができる. 例えば地球科学における描画には地図投影する機能や欠損値処理が不可欠だろう. 例えば医学分野の可視化ソフトウェアであれば地図投影の機能はおそらくないだろうが GAVE では既に実装されている. 今後の開発でも地球流体科学の研究のためになる機能を中心に実装されると思われる.