GAVE は多次元データに対して描画, データに対する数値演算, netCDF の自己記述された属性の表示, そして描画結果の保存ができる. 以下ではこれらの機能を説明する.
描画には次元変数を1つとる折れ線図と, 次元変数を2つとる等値線図の2種類が可能である. 選択した変数が2つ以上の次元を持つの場合はデフォルトで等値線図が選ばれる. その際選択した変数の最初の2つの次元が次元変数として選ばれる. また, 等値線図の場合, 地図投影を用いることもできる(後述). 図2は左から折れ線図を書いた例, 等値線図を書いた例, 地図投影に正射図法を用いて等値線図を書いた例を並べたものである.
図のタイトル, 軸のタイトルと単位はデータの属性に該当する値があれば, その値がデフォルトで設定される. またユーザーが陽に設定することもできる. ただしこれらの値に日本語を使用することはできない. 性格には描画された図中には英数字しか記述することができない.
地図投影とは球面を2次元平面に投影する方法である. GAVE が現在利用できる地図投影は以下の4つの図法である.
正射図法 (ORTHOGRAPHIC)
無限遠から見た地球を表す半球図. 半球より広い範囲を表示することはできない.
ポーラーステレオ図法 (POLAR STEREO)
表示する反対側の極を視点として投影した図法. 緯線・経線との角度が正しい.
正距方位図法 (AZIMUTHAL)
図の中心からの距離が正しい.
ランベルト正積方位図法 (AZIMUTHAL EQ.AREA)
面積が正しい.
図3は地図投影の例である.
多次元データから切り出す面を指定する. 例えば, 緯度, 経度, 時間(月)の3次元の降水量データがあったとする. このデータから例えば, 8月の日本付近を描画範囲に指定するとしたら, 緯度を20°〜50°, 経度を東経120°〜160°に指定し時間を8月に指定する. ただし, 各軸に直行する断面しか切り出すことはできない.
空間的な構造や時間的な移り変わりなどを見るためデータをアニメーションとして表示することが可能である. 例えば前出の描画範囲指定で示したデータならば降水量の時間変化などを見ることができる. アニメーションの速度すなわち描画間隔も調節することができる. また, アニメーションは録画することも可能である(後述).
線形座標軸または対数座標軸(片対数, 両対数)をとることができる.
等値線とトーンの塗分けは自動的に適当な間隔が設定されて描画される. その設定を変更したい場合は手動で設定しなおすこともできる. データの特徴が最もよく表現されるように可視化するためには自動的に設定された値では不十分なことが多い. そこで手動で設定しなおす機能が用意されている. この設定も他の設定と同様に対話的に行うことができる. 特にトーンの設定は実際に変更した結果を見ないことには最適な設定になっているかどうか分からないため GUI の操作が非常に有効である.
必要であれば欠損値を設定することができる. データの属性で欠損値が明示されていれば自動的にその値が欠損値として設定される.
多次元データに対して数値演算を行うことができる. 現時点で実行可能な数値演算は平均, 最大, 最小, 標準偏差の4つである. 例えば次元変数に緯度, 経度, 時間(日)を持つある年の1月の降雨量のデータがあるとする. このデータを時間方向に平均をとれば, すなわち降雨量の1月平均のデータとなる. また演算した結果は新しい変数として扱われるため再び演算することも描画することもできる. この例であれば1月平均の降雨量の分布などを描画することが可能であり, 経度方向または緯度方向に再び演算することが可能である.
netCDF ファイルが持つ自己記述された情報を表示する機能を持っている. 通常これを確認するためには netCDF ライブラリに付属する ncdump というツールをコマンドラインから使って確認することができる. 同様のことが GAVE の属性表示機能でもできる.
描画結果を画像ファイルとして保存することができる. 保存する画像形式は拡張子によって判別される. PNG, JPEG , TIFF , PPM などの形式に対応している.
アニメーション表示機能を使って描画されている絵を1コマずつ保存することができる. 保存形式は PPM であり, ファイルには自動的に通し番号が付く. GAVE の機能からは外れるが, PPM 形式の画像は MPEG 形式の動画にエンコードすることができる.
可視化を再現する Ruby スクリプトを保存することができる. データファイルと, 保存したスクリプトをセットにしておけば可視化を再現することができる. さらに前節でふれたようにこのスクリプトに各々必要な修正を加える雛形として利用することができる.