二つのよく似た縞模様を重ねると,モアレ縞が発生する. 全く同じ模様であれば,モアレ縞はできないが, 微妙に異なる模様を重ねると,その「ずれ」に応じた干渉縞ができる.
一方, 塩水などの屈折率はその濃度に依存し, 濃度が高くなると屈折率も大きくなる. したがって, 成層流体中に水平に入射した光は濃度勾配の方向に屈折する.
これらのことを利用して, 成層流体を通してみた縞模様の干渉縞から, 密度場擾乱を可視化することができる.
ライトボックスの前面に縦縞模様 (G1) を印刷し, その縞模様よりピッチの狭い縦縞模様 (G2) を 透明アクリル板に印刷してライトボックスから少し離して置く. この透明アクリル板を通して,ライトボックスの縞模様を見ると, 一般にはモアレ縞が見えるが, 適当な距離から見ると,二つの縞模様が完全に重なり,モアレ縞が消える.
この状態で,手前の縞 (G2) の前 (後ろでもよい) に水槽をおいて, その中に密度成層を作る. 成層によって光は下向きに曲がるが,縞模様が縦縞なので, 縞の重なり具合は変わらない.
その成層流体に波が起こると, 光が横方向に曲がるようになるため, ライトボックスの縞模様が変形しモアレ縞があらわれる. このモアレ縞は,水平方向の密度勾配の等値線となるので, 波の振幅と方向が一様ならば, 等位相線となる.
この方法の感度は2つの縞を離すほど, また,縞のピッチが狭いほど高くなる. しかし,この縞をカメラなどで撮影するためには, 両方の縞模様にピントが合っていなければならないので, 無制限に感度を上げることはできない.
水槽の側面が曲面の場合, 流体が静止しているときでも, 水槽を通る光の曲がり方は一様ではない. したがって, 2枚の模様を完全に重ねてモアレ縞を消すことは, ほとんど不可能である. そのような場合でも, 一枚の縞を波の位相が180度ずれたタイミングで撮影し, あとでそれを合成することで,モアレ縞を得ることができる.
この方法で最も重要なのは, 2枚の画像を縞模様のピッチよりも高い精度で重ねることである. フィルム上の異なるコマの間でこの重ね合わせを行うことは非常に難しい. そこで実験室を暗くして, 波の半周期の間カメラのシャッターを解放にし, ストロボを半周期ずらして2回発光させることにより, 1枚のフィルム上に2つの画像を焼きつける. この時,カラーフィルムを使い, ストロボに赤と青のセロファンをかぶせて色をつけておくと, コンピュータ処理により,2つの画像を分離してモアレ縞を得ることができる.