さすがにレコードプレーヤでは力不足なので, 1982年に実験用の回転台を制作した.
モーターは200Wのサーボモーターに1/30の減速ギアを組み合せたもの (日立 MD-0.2DGE), 減速後の回転数は6-60rpm(定格値)である. この回転をベルトで回転台の軸に伝える際に20% 程減速して, 最終的に回転台の回転数は5-50rpmとなっている. 付属のコントローラーはバリオームにより回転数を調節するものであったが, 細かな調整ができないので, これを改造して回転数をデジタルで設定できるようにしてある. 回転数の安定度は短周期(数分)の変動が 0.1% 程度, 長期のドリフトが1時間あたり1% 程度(どちらも実測値)である. レコードプレーヤーに比べて非常に悪いが, ほとんどの実験では問題なく使用できた.
回転数を計測するため, 回転台の軸の下部にはアルミ製の円盤が取り付け, これを挟むようにフォトダイオードとフォトトランジスタを配置した. この円盤に開けた穴がフォトトランジスタの前を 通過するときにパルスが発生するので, この周期をカウンターで計ることで回転数が計測できる. 円盤に複数の穴を開ければそれだけ短時間で回転数が測定できるが, 精度よく等間隔に穴を開けるのが難しいため, 穴は1つしか開けていない. この場合, 回転数の計測には2周期分の長さが必要である.
軸の上部には電源供給用のスリップリングが4チャンネルついている. これはモーター用のカーボンブラシを 銅製のリングに2箇所で接触させているもので, センサー等の微弱電流には使えない. (そのような微弱電流用のスリップリングは回転台本体よりも高価であるが, このスリップリングはビデオカメラや各種装置の電源の他, 電磁ソレノイドを静止系から開閉する (フーコーの振子, Ekman らせん 等)のに使用している.
回転台の上部には4本足のフレーム (幅約50cm, 奥行き約30cm) が取り付けてあり, フレームごと回転する. このフレームにカメラを取りつけることで回転系からの映像を記録する.
(制作:伊勢屋)
回転対流の実験でかなり強力な冷却装置が必要になり, 第二世代の回転台ではそれが乗せられなかったので, 新たに大きな回転台を制作することにした. 回転する実験台の大きさは80cm X 80cm で, その下に冷却装置を乗せるスペースを作ってある.
駆動系としてステッピングモータに1/200の減速ギアをつけたもの (オリエンタルモータ, UPD599HG2-B)を用いた. ステッピングモータは入力パルスに応じてするので, 回転数を2桁以上にわたって正確にコントロールできる. (サーボモーターでは1桁が限界) この回転台の最高回転数は 28回転/分 程度である.
高い回転精度を活かすため, 回転台の軸に伝えるベルトにはスチールベルト (Dymco製)を使った. V ベルトではどうしてもベルトの継ぎ目の部分で, わずかに回転速度が変動してしまうためである. スチールベルトは精密機械などに使われるもので, プーリーもスチールベルト専用のものを使うことになる. V ベルトと違って,プーリの側面にガイドがないので, 2つのプーリーの回転軸を精度よく平行にしないと, ベルトが外れてしまう. したがって, モーター軸の角度が細かく調整できるような設計が必要である. (実はこの回転台の設計時にそのような配慮をしなかったため, モータマウントに金属板をはさむなどして調整せざるを得なかった)
モーターのコントローラはパソコンの拡張ボード上に自作した. 市販のコントローラもあるが, 多くのコントローラは工作機械の位置決めを念頭に置いたもので, 一方方向に連続回転させることを想定していない. パソコンを使ってコントローラを作れば, 原理的にどのような動きも可能である. 具体的にはパラレル I/O の 8255 で回転方向などを制御し, タイマ 8253 で内部クロックを分周して, 回転に必要なパルスを発生させる.
第三世代の回転台もスリップリングは主として電源供給用で 微弱電流を考えていないが, 冷却機の消費電力が大きいため, メーカー製のスリップリング (Litton Westrex, AC4598-6) を使用した. これは 10A のリングが 6 個ついたものである. (制作:伊勢屋)