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非凝縮成分(H2(g), He(g) の混合気体を想定), 凝縮成分(H2O(g) を想定)から
成る系において, エネルギー保存則とクラウジウス・クラペイロンの式を
用いて温度分布とモル比の分布を求め, 
それらを用いて解析的に湿潤断熱減率と静的安定度をプロットする. 
 
従来の論文では, 静的安定度に関して以下の議論がなされている. 
 
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 Achterberg and Ingersoll (1989)
 ブラントバイサラ振動数を, 
     木星表層のアンモニア雲の直下までは観測された温度と
     乾燥断熱減率の差として見積り, 
     アンモニア雲より下では湿潤断熱減率と乾燥断熱減率の差
     として見積もった. 
 
 木星大気において, 元素組成を 0.1 x solar -- 5 x solar の間
     で変化させた時のロスビー変形半径と 1 x solar での
     ブラントバイサラ振動数 N を示した.
 
 ブラントバイサラ振動数 N は凝結成分組成の平方根に比例し, 
     静的安定度 N^2 は凝結成分組成に比例すると結論づけた.
 
 Ingersoll and Kanamori (1995)
  SL9 衝突波の位相速度が 1 x solar の時に予想される
      内部重力波の位相速度の 3 倍強であったことから, 
      SL9 衝突波の位相速度を内部重力波で説明するには N が \sqrt{10} 倍, 
     すなわち凝縮成分組成が 10 x solar であれば良いと述べている.
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定式化ドキュメントによると, 静的安定度と
凝縮成分のモル比が比例するのは, 凝縮物が少ないとする近似が成立する場合
のみである. モル比を増やすとこの近似は破れ, 凝縮成分を増やしても
静的安定度は比例しなくなる. 
 
結果を見ると今回の計算条件では, 凝縮成分の組成が太陽組成程度までは解析
解は凝結成分少ない近似での解とほぼ一致することがわかるが, それよりも組
成が大きくなるとその近似が崩れることがわかる. 太陽組成を 50 倍にした
場合には, 凝結高度付近で解析解は凝結成分多い近似での解とほぼ一致するが, 
しだいに凝結成分少ない近似の解に近付くことがわかる. 現在は擬断熱過程を
考えているので, 凝結成分は系から取り除かれるためである. 
 
凝結高度付近で静的安定度と仮温度減率の曲率が変わるのは組成の効果である
と考えられる. 凝結高度付近はその上層に比べて "[乾燥気塊の分子量] / [気
塊の分子量] " が小さくなり, そのため温度減率が小さくなり(=温度が上下で
あまり変わらない), 静的安定度が大きくなる.
 
   計算日時
   2004-11-17 
   ソース
   
	./eccm/src/eccm.f90
   ドキュメント
   
	./eccm/doc/
   設定
   	
  
   | 化学種 | 非凝縮成分(H2(g), He(g)), 凝縮成分(H2O(g)) |  
   | 凝縮成分 | H2(g) と He(g) の混合物. H/He = 0.095 (1 x solar) |  
   | 格子点数 | 1,000 (ログ座標で等間隔) |  
   | 圧力領域 | 10 bar -- 0.1 bar |  
   | 計算開始温度 | 450 K |  
   | 潜熱 | 40,660 J/mol (水蒸気 --> 水) 飽和蒸気圧は潜熱とクラウジウスクラペイロンの式より与える.
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   | 重力 | 23.2 m/s^2 (木星) |  
   | 気体定数 | 8.31 J/K mol |  
   | 比熱 | 25.0 J/K mol (水素), 20.786 J/K mol (ヘリウム), 35.0 J/K mol (水) |  
	酸素 O の組成を 0.01, 0.1, 1, 10, 50 倍した場合の計算. 
	黒線は解析解, 赤線は凝縮成分が少ない近似, 緑線は凝縮成分が
	多い近似の場合である. 
 
  
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   | 凝縮成分を太陽組成の 0.01 倍にした場合. 
	赤線と黒線は一致する. | 凝縮成分を太陽組成の 0.1 倍にした場合. 
	赤線と黒線は一致する. | 凝縮成分を太陽組成の 1 倍にした場合. 
	赤線と黒線はほぼ一致する. |  
   |   |   |   |  
   | 凝縮成分を太陽組成の 5 倍にした場合 | 凝縮成分を太陽組成の 10 倍にした場合 | 凝縮成分を太陽組成の 50 倍にした場合 |  
	酸素 O の組成を 0.01, 0.1, 1, 10, 50 倍した場合の計算. 
	黒線は解析解, 赤線は凝縮成分が少ない近似, 緑線は凝縮成分が
	多い近似の場合である. 
 
  
   |   |   |   |  
   | 凝縮成分を太陽組成の 0.01 倍にした場合. 
	赤線と黒線は一致する. | 凝縮成分を太陽組成の 0.1 倍にした場合. 
	赤線と黒線は一致する. | 凝縮成分を太陽組成の 1 倍にした場合. 
	赤線と黒線はほぼ一致する. |  
   |   |   |   |  
   | 凝縮成分を太陽組成の 5 倍にした場合 | 凝縮成分を太陽組成の 10 倍にした場合 | 凝縮成分を太陽組成の 50 倍にした場合 |  
	酸素 O の組成を 0.01, 0.1, 1, 10, 50 倍した場合の計算. 
	黒線は解析解, 赤線は凝縮成分が少ない近似, 緑線は凝縮成分が
	多い近似の場合である. 
 
  
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   | 凝縮成分を太陽組成の 0.01 倍にした場合. 
	赤線と黒線は一致する. log プロットしてある
 | 凝縮成分を太陽組成の 0.1 倍にした場合. 
	赤線と黒線は一致する. log プロットしてある
 | 凝縮成分を太陽組成の 1 倍にした場合. 
	赤線と黒線はほぼ一致する. |  
   |   |   |   | 
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   | 凝縮成分を太陽組成の 5 倍にした場合 | 凝縮成分を太陽組成の 10 倍にした場合 | 凝縮成分を太陽組成の 50 倍にした場合 |  
 
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