感温液晶マイクロカプセルによる可視化


可視化原理

液晶カプセルを少量水に分散させ, それにスリット光をあてると, その光が当たった面の温度を可視化することができる.

液晶カプセル

この可視化に使う液晶カプセルとは, 温度で色が変わる液晶を樹脂のマイクロカプセルに入れたものである. カプセルの大きさは数十ミクロン程度で, 製法上スラリー状 (水で練ったような状態) のものが生産される. 油に分散させるためには,これを乾かして粉状にしたものを使う. 発色温度範囲はさまざまなものが制作可能なので, 既製品はなく注文生産となる. 実験で使うのはごく少量なので, 最小単位の100g 程度で十分であるが, 値段は量にあまりよらず, 1種類作ると約10万円程かかる. (日本カプセルプロダクツ製)

発色特性

角度 180 90
32.9 32.4
33.5 32.6
33.8 32.7
34.5 32.8
35.5 33.0

もともと, このような液晶カプセルは塗料に混ぜるなどして使うことを念頭に 生産されているため, メーカが測定値として提供してくれる発色温度範囲のデータは, 「黒色の紙をバックにして, 180度の反射光 (観測者背後より照明したとき) の色」である. 実験では, ほぼ90度の散乱光を観測することになるが, この時の発色温度範囲はメーカの測定値よりかなり狭く, 低温側に偏る. すなわち,発色温度の下限はあまり変わらず, 上限が極端に下がる. さらに,観測する角度によって色がかなり変化するので, 定量的な測定には注意が必要である.

可視化のコツ

この可視化法では, カプセルを入れすぎると, 作業流体が白濁してきれいに可視化できない. 通常光ではほとんどカプセルが入っていることがわからないくらい 少量のカプセルを分散させるのがコツである. それだけ少量のカプセルを十分強く光らせるためには, かなり強力なスリット光が必要になる.

光源

回転台に乗せられる程コンパクトでかなり強力なスリット光源として, 光ファイバを使ったリニア照明システムが使える. (モリテックス) これは,ハロゲンランプから出た光を光ファイバの束に通し, もう一端でファイバを直線上に並べて, そこから出てきた光をシリンドリカルレンズで集光するものである. 50W 程度のランプでかなり強力な光のシートを作ることができる. ただし,この照明装置は, もともと工場のオートメーションシステムで特定の場所を 線状に照明するためのものなので, 余計な部分に光を漏らさないような配慮はあまりない. したがって, 光のシート以外の部分に光を漏らさないようにするためには, シリンドリカルレンズの前に, もうひとつスリットを置く方が良い.