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静的安定度の計算

杉山耕一朗(北大理・地惑)

ugiyama@gfd-dennou.org

2005/08/21


目次

1 静的安定度

1.1 静的安定度の定義

気塊を断熱的に上昇させる過程を考える. 気塊の密度と周囲の空気の密度差 によって浮力が生じ, その浮力を復元力とする振動の振動数を浮力振動数 $N$ と呼ぶ. 浮力振動数の 2 乗を静的安定度 $N^{2}$ と呼ぶ.

気塊が上昇することによって, 本来は気塊の周囲の大気の圧力と密度も影響を 受けるはずである. しかしその影響を小さいとして無視する方法をパーセル法と いう. 本節ではパーセル法による静的安定度の定式化を述べる.

気塊とその周囲の大気を考える. 気塊とその周囲の大気には以下のような関係が 成立すると仮定する.

気塊と周囲の大気の密度差は,
$\displaystyle d \rho = \rho^{*} - \rho$     (3)

と書けるので, 運動方程式は,
$\displaystyle \DD[2]{}{t} \delta z
= \frac{\left(\rho - \rho^{*}\right) g}{\rho^{*}}$     (4)

となる. ただし $g$ は重力加速度である. (4) 式右辺の $\rho, \rho^{*}$ をテーラー展開し, 2 次以上の微小項を無視すると,
$\displaystyle \frac{\left(\rho - \rho^{*}\right) g}{\rho^{*}}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g}{\rho^{*}}
\left\{
\left(
\rho\vert _{z=z_{0}} + \DD{\rho...
...-
\left(
\rho^{*}\vert _{z=z_{0}} + \DD{\rho^{*}}{z} \delta z
\right)
\right\},$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g}{\rho^{*}}
\left(
\DD{\rho}{z} \delta z - \DD{\rho^{*}}{z} \delta z
\right)$  

となる. ただし式変形において (1) 式の関係を用い た. 理想気体の状態方程式が成立するので, 以下のように変形できる.
$\displaystyle \frac{g}{\rho^{*}}
\left(
\DD{\rho}{z} \delta z - \DD{\rho^{*}}{z} \delta z
\right)$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g T^{*}}{ M^{*} }
\left\{
\DD{}{z} \left( \frac{M}{T} \right)
- \DD{}{z} \left( \frac{M^{*}}{T^{*}} \right)
\right\} \delta z ,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g T^{*}}{ M^{*} }
\left\{
M \DD{}{z} \left( \Dinv{T} \right...
...z} \left( \Dinv{T^{*}} \right)
- \Dinv{T^{*}} \DD{M^{*}}{z}
\right\} \delta z ,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g T^{*}}{ M^{*} }
\left\{
- \frac{M}{T^{2}} \DD{T}{z}
+ \frac{M^{*}}{{T^{*}}^{2}} \DD{T^{*}}{z}
+ \Dinv{T} \DD{M}{z}
\right\} \delta z ,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \left\{
\frac{g} {T }
\left(
- \DD{T}{z}
+ \frac{M}{M^{*}} \DD{T^{*}}{z}
\right)
+ g
\left(
\Dinv{M} \DD{M}{z}
\right)
\right\} \delta z$ (5)

但し $M$ は大気の分子量である. また式変形において (2) 式を利用した. (5) 式を (4) 式に代入する ことで,
$\displaystyle \DD[2]{}{t} \delta z
=
\left\{
\frac{g} {T }
\left(
- \DD{T}{z}
+...
...} \DD{T^{*}}{z}
\right)
+ g
\left(
\Dinv{M} \DD{M}{z}
\right)
\right\} \delta z$     (6)

となる. 解として $\delta z = sin(Nt)$ を用いることで静的安定度は,

$\displaystyle N^2
\equiv
\frac{g}{T}
\left(
\DD{T}{z} - \frac{M}{M^{*}}\DD{T^{*}}{z}
\right)
-
g
\left(
\Dinv{M} \DD{M}{z}
\right)$     (7)

と定義される.

図 1: パーセル法による静的安定度の見積もりの概要. 気塊の周囲の大気の温度 $T$ と 分子量 $M$, 気塊の温度 $T^{*}$ と分子量 $M^{*}$ とする. $z = z_0$ において気塊と周囲の大気の密度が等しく, 理想気体の状態方程式 が成立するならば, $M/T = M^{*}/T^{*}$ となる. また気塊を上昇・下降させた際, 気塊の温度は変化するが 気塊から凝縮物が離脱しないと仮定したので, $z+dz$ における気塊の分子量は $M^{*}$ のまま維持される.
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[80mm]{ps/parcel.eps}
\end{center}\end{figure}

1.2 惑星大気の静的安定度の計算

前節の議論より, 静的安定度を与えるためには, 1) 気塊の分子量と大気の分子量との関係, 2) 大気の平均的な温度分布, 3) 大気の平均的な分子量分布, 4) 気塊の温度変化, の情報が 必要である. 本節では, その 3 つの与え方を考察する.

1) の気塊と大気の分子量の関係であるが, 理想気体の条件が成立し, かつ $z = z_{0}$ において気塊と周囲の大気温度が等しいと仮定するならば,

$\displaystyle M = M^{*}$     (8)

が成立する. その時, 静的安定度 (7)は,
$\displaystyle N^2
\equiv
\frac{g}{T}
\left(
\DD{T}{z} - \frac{M}{M^{*}}\DD{T^{*}}{z}
\right)
-
g
\left(
\Dinv{M} \DD{M}{z}
\right)$     (9)

と与えられる.

2) の大気の平均的な温度分布は, 大気の湿潤断熱温度減率から与える. Fig.2 は地球大気の平均的な温度構造の決まり方の 模式図であるが, 地球のように活発な対流を生じる大気での温度構造は 湿潤断熱的な構造となっている. 他の惑星大気においても, 活発な対流活動が 存在すれば, 温度構造は湿潤断熱的な構造になっている可能性がある.

3) の大気の平均的な分子量分布は, 大気の湿潤断熱的に決まる分子量減率を そのまま用いる. Fig.2 に示したように, 地球大気の平均分子量は ほぼ乾燥成分の分子量である. 他の惑星大気においても 平均的な分子量分布は湿潤断熱的に決まる分子量分布からずれている可能性が高 い. しかし本節では分子量の効果を最大限に見積もるために, あえて上記の設定を用いる.

4) の気塊の温度変化は断熱温度減率によって与える. 気塊内で凝縮が生じるか否かで, 湿潤断熱温度減率または乾燥断熱減率が選ばれる.

多数の凝縮成分の存在する系において,大気の平均的な温度分布と分子量分布の 具体的な定式化を与えるのは困難である. そこで本節では 3) の 気塊の温度変化 $\DD{T^{*}}{z}$ の具体的な形式を与えるにとどめる. 凝縮成分と乾燥成分の 2 成分から成る大気の大気の平均的な温度分布と分子量 分布は簡単に与えることができるが, その定式化は次章で行うこととする.

図 2: 地球大気での平均的な温度・分子量の決まりかたの模式図. 地球大気 の対流構造は, 狭い上昇流域と広い下降流域, によって特徴づけられる. 平均 的な温度は雲の中の湿潤断熱減率で決まり, 平均的な分子量は下降域の乾燥成 分のみの分子量で決まる.
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[140mm]{ps/cloud.eps}
\end{center}\end{figure}

1.2.1 気塊内で凝縮が生じない場合

気塊内で凝縮が生じない場合, 気塊の温度変化 $dT^{*}/dz$ は以下のように表すことができる.
$\displaystyle \DD{T^{*}}{z} = - \frac{M g}{c_{p}}.$      

上式を (9) に代入することで, 静的安定度は以下のように表現される.
$\displaystyle N^{2}
=
\frac{g}{T}
\left(
\DD{T}{z}
+ \frac{M g}{c_{p}}
\right)
-
g \left(
\frac{1}{M} \DD{M}{z}
\right) .$     (10)

気塊は飽和しているので, 上昇させると必ず凝縮が生じるはずである. (10) で見積もられる静的安定度は, 飽和した気塊を凝縮が生じないよう下向きに変位させた時の値と みなすことができる.

1.2.2 気塊内で凝縮が生じる場合

気塊内で凝縮が生じる場合には, 気塊の断熱温度減率は湿潤断熱温度減率に等しくなる.
$\displaystyle \DD{T^{*}}{z} = \DD{T}{z}$      

上式を (9) に代入することで, 静的安定度は以下のように表現される.
$\displaystyle N^{2}
= - \frac{ g}{M} \DD{M}{z}$     (11)

すなわち静的安定度は分子量効果によって決まる.

1.2.3 気塊の分子量が変化しない場合

従来の研究では, 大気中の可凝縮成分は十分に少ないと仮定し, 大気の平均分子量と平均比熱は乾燥成分のそれに等しいと見なす ことがままある. そこでそのような場合についても式を求めておく. この場合, (9) 式の 右辺第 2 項の分子量効果が無視できるので,

$\displaystyle N^{2}
=
\frac{g}{T}
\left(
\DD{T}{z} + \frac{M_{d} g}{{c_{p}}_{d}}
\right)$     (12)

と書ける. 但し凝縮成分が十分に少ないので, 気塊内で凝縮は生じず, 気塊の分子量と比熱は乾燥成分の値に近似した. すなわち静的安定度は湿潤断熱減率と乾燥断熱減率との差から見積も ることができる.

2 断熱温度減率・静的安定度の近似系

本節では, 静的安定度と凝縮成分気体のモル比との関係を調べるために, 簡単な系を設定し, その時の断熱温度減率と静的安定度を議論する.

2.1 系の設定

簡単のために, 大気は乾燥成分と凝縮成分の 2 成分から成るものとする. 乾燥成分と凝縮成分の分子量をそれぞれ $M_{d}$$M_{v}$, 乾燥成分と凝縮成分の比熱をそれぞれ ${c_{p}}_{d}$${c_{p}}_{v}$, 凝縮成分のモル比を $X$ とする. その時, 系全体の分子量と比熱は以下のよう に書ける.

$\displaystyle M = M_{d} (1 - X) + M_{v} X$     (13)
$\displaystyle c_{p} = {c_{p}}_{d} (1 - X) + {c_{p}}_{v} X$     (14)

2.2 断熱温度減率

Weidenschilling and Lewis (1973), Atreya and Romani (1985) に従って 湿潤断熱減率を定式化する. 熱力学の第 1 法則は,

$\displaystyle dU = \delta Q + \delta W + \delta Z ,$     (15)

である. ここで $dU$ は内部エネルギー, $\delta Q$ は系に加えられる熱量, $\delta W$ は系に加える仕事, $\delta Z$ は化学エネルギーである. 考えている系において気体は理想気体として取り扱うことができ, その変化は断熱的にであるとすると, (15) 式の各項は以下のように書ける.
$\displaystyle dU$ $\textstyle =$ $\displaystyle c_{v} dT.$ (16)
$\displaystyle \delta Q$ $\textstyle =$ $\displaystyle 0.$ (17)
$\displaystyle \delta W$ $\textstyle =$ $\displaystyle - p dV,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle - d(pV) + V dp,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle - R dT + V dp,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle - R dT + V \left( \frac{- M p g}{R T} \right) dz,
\; (∵ 静水圧平衡の式)$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle - R dT - M g dz .$ (18)
$\displaystyle \delta Z$ $\textstyle =$ $\displaystyle - \lambda dX.$ (19)

ここで $c_{v}$ は大気の定積モル比熱の平均値, $T$ は温度, $p$ は圧力, $V$ は 気体分子の 1 モル当たりの体積, $R$ は気体定数, $M$ は平均分子量, $g$ は重力加速度, $\lambda$ は大気中の凝縮成分のモル当たりの 凝縮のエンタルピー, $dX$ は凝縮成分のモル比の変化である. (15) 式に (16) - (19) 式を代入することで,
    $\displaystyle c_{v}dT + R dT + M g dz + \lambda dX = 0 ,$  
    $\displaystyle c_{p}dT + M g dz + \lambda dX = 0 ,$ (20)

となる.但し $c_{p}$ は大気の定圧モル比熱の平均値で, 理想気体の場合 $c_{p} = c_{v} + R$ である.

2.2.1 乾燥断熱温度減率

(20) 式の潜熱による項を無視することで乾燥断熱温度減率が 求まる.

    $\displaystyle c_{p}dT + M g dz = 0,$  
    $\displaystyle \DD{T}{z} = - \frac{ M g }{c_{p}},$ (21)

平均分子量と平均比熱を (13), (14) 式を用い て表現すると, 乾燥断熱温度減率は以下のように変形できる.
$\displaystyle \DD{T}{z} =
- \frac{ M_{v} g }{ {c_{p}}_{d}}
\left\{
\frac{ 1 + \...
...}{M_{d}} }
{ 1 + \frac{( {c_{p}}_{v} - {c_{p}}_{d} ) X}{{c_{p}}_{d}}}
\right\}.$     (22)

さらに温度の圧力微分は以下のように書ける.
    $\displaystyle \DD{T}{p} = \frac{ R T }{ c_{p} p },$ (23)
    $\displaystyle \DD{T}{p} = \frac{ R T }{ {c_{p}}_{d} p }
\left\{
\Dinv{ 1 + \frac{( {c_{p}}_{v} - {c_{p}}_{d} ) X}{{c_{p}}_{d}}}
\right\}.$ (24)

さらに凝縮成分が少ないとする近似式と 凝縮成分が多いとする近似式も併せて導出する. その導出は以下の通りである.

凝縮成分が少ない近似
 
(22) 式において十分に凝縮性成分の少ない場合, つまり
$\displaystyle M \approx M_{d}, \;\;\;
c_{p} \approx {c_{p}}_{d}, \;\;\;$     (25)

を考える. その場合には,
$\displaystyle \DD{T}{z}
\approx - \frac{M_{d} g}{{c_{p}}_{d}}$     (26)

と近似することができる.
凝縮成分が多い近似
 
(22) において十分に凝縮性成分の多い場合, すなわち
$\displaystyle M \approx M_{v}, \;\;\;
c_{p} \approx {c_{p}}_{v},$     (27)

の場合には,
$\displaystyle \DD{T}{z}
\approx - \frac{M_{v} g}{{c_{p}}_{v}}$     (28)

と近似することができる.

2.2.2 湿潤断熱温度減率

$dX$ をモル分率と分圧の関数として表すと以下のようになる.

$\displaystyle dX = \Dinv{p} de - \left( \frac{e}{p^{2}} \right) dp.$     (29)

ただし $e$ は凝縮成分の飽和蒸気圧である. この式にクラウジウス・クラペイ ロンの式
$\displaystyle de = \frac{e \lambda dT}{R T^{2}},$     (30)

を代入して変形すると,
$\displaystyle dX$ $\textstyle =$ $\displaystyle \Dinv{p} de - \frac{e}{p^{2}} dp,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \Dinv{p} \left( \frac{e \lambda dT}{R T^{2}} \right)
- \frac{e}{p^{2}} \left( - \frac{ M p g}{R T} dz \right) ,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{e}{p} \frac{\lambda}{ R_{v} T^{2}} dT
+ \frac{e}{p} \frac{M g}{ R T} dz ,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{ \lambda X }{ R T^{2}} dT
+ \frac{M g X}{ R T} dz .$ (31)

となる.

(20) 式に (31) 式を代入することで湿潤断熱温度減率が求まる.

    $\displaystyle c_{p}dT + M g dz + \lambda dX = 0 ,$  
    $\displaystyle c_{p} dT + M g dz +
\lambda
\left(\frac{\lambda X }{ R T^{2}} dT
+ \frac{M g X}{ R T} dz \right) = 0,$  
    $\displaystyle c_{p}
\left( 1+ \frac{ \lambda^{2} X}{ c_{p} R T^{2}} \right) dT
+ M g \left( 1 + \frac{ \lambda X}{R T} \right) dz
= 0,$  
    $\displaystyle \DD{T}{z} = - \frac{M g}{c_{p}}
\left(
\frac{ 1 + \frac{ \lambda X}{R T}}
{ 1 + \frac{ \lambda^{2} X}{ c_{p} R T^{2}} }
\right).$ (32)

平均分子量と平均比熱を (13), (14) 式を用い て表現すると, 湿潤断熱温度減率は以下のように変形できる.
$\displaystyle \DD{T}{z} = - \frac{M_{d} g}{{c_{p}}_{d}}
\left\{
\frac{ 1 + \fra...
...\frac{ \lambda X}{R T}}
{ 1 + \frac{ \lambda^{2} X}{ c_{p} R T^{2}} }
\right)
.$     (33)

さらに (32), (33) を変形することで 温度の圧力微分は以下のように書ける.
    $\displaystyle \DD{T}{p} = \frac{R T}{c_{p} p}
\left(
\frac{ 1 + \frac{ \lambda X}{R T}}
{ 1 + \frac{ \lambda^{2} X}{ c_{p} R T^{2}} }
\right),$ (34)
    $\displaystyle \DD{T}{p} = \frac{R T}{{c_{p}}_{d} p}
\left\{
\Dinv{ 1 + \frac{( ...
... \frac{ \lambda X}{R T}}
{ 1 + \frac{ \lambda^{2} X}{ c_{p} R T^{2}} }
\right).$ (35)

さらに従来の研究で用いられた凝縮成分が少ないとする近似式を求め, さらに凝縮成分が多いとする近似式も併せて導出する. その導出は以下の 通りである.

凝縮成分が少ない近似
 
(32) 式において十分に凝縮性成分の少ない場合, つまり
$\displaystyle M \approx M_{d}, \;\;\;
c_{p} \approx {c_{p}}_{d}, \;\;\;
\frac{ \lambda X }{R T } \ll 1, \;\;\;
\frac{ \lambda^{2} X }{ c_{p} R T^{2} } \ll 1,$     (36)

を考える. その場合には,
$\displaystyle \DD{T}{z}$ $\textstyle \approx$ $\displaystyle - \frac{M_{d} g}{{c_{p}}_{d}}
\left( 1 + \frac{ \lambda X}{R T} \right)
\left( 1 - \frac{ \lambda^{2} X}{ {c_{p}}_{d} R
T^{2}} \right) ,$  
  $\textstyle \approx$ $\displaystyle - \frac{M_{d} g}{{c_{p}}_{d}}
\left\{ 1 - \frac{\lambda X}{ {c_{p}}_{d} T}
\left( \frac{ \lambda}{ R T}
- \frac{{c_{p}}_{d}}{R} \right) \right\},$ (37)

と近似することができる. 但し $X$ に関する 2 次の微少量は十分に小さいものとして無視した.
凝縮成分が多い近似
 
(32) において十分に凝縮性成分の多い場合, すなわち
$\displaystyle M \approx M_{v}, \;\;\;
c_{p} \approx {c_{p}}_{v}, \;\;\;
\frac{ \lambda X }{R T } \gg 1, \;\;\;
\frac{ \lambda^{2} X }{ c_{p} R T^{2} } \gg 1,$     (38)

の場合には,
$\displaystyle \DD{T}{z}$ $\textstyle \approx$ $\displaystyle - \frac{M_{v} g}{{c_{p}}_{v}}
\frac{\frac{ \lambda X}{R T}}
{\frac{ \lambda^{2} X}{ {c_{p}}_{v} R
T^{2}} } ,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle -
\frac{M_{v} g T}{\lambda}$ (39)

と近似することができる.

2.3 静的安定度

静的安定度の式 (10) に (13) 式 を代入することで得られた式,

$\displaystyle N^{2}
=
\frac{g}{T}
\left(
\DD{T}{z}
+ \frac{M g}{c_{p}}
\right)
-
\frac{ g (M_{v} - M_{d})}{M} \DD{X}{z},$      

にクラウジウス・クラペイロンの式 (31) を
$\displaystyle \DD{X}{z}
= \frac{ \lambda X }{ R T^{2}} \DD{T}{z} + \frac{M g X}{ R T}$      

のように変形して代入すると,
$\displaystyle N^{2}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g}{T}
\left(
\DD{T}{z}
+ \frac{M g}{c_{p}}
\right)
-
\frac{...
...{M}
\left( \frac{ \lambda X }{ R T^{2}} \DD{T}{z} + \frac{M g X}{ R T} \right),$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g}{T}
\left[
\frac{M g}{c_{p}} +
\DD{T}{z} \left\{
1 - \fra...
... T}
\right\}
\right]
-
\frac{g}{T} \frac{ (M_{v} - M_{d})}{M} \frac{M g X}{ R }$ (40)

となる. 平均分子量と平均比熱を (13), (14) 式を用い て表現すると, 静的安定度は以下のように変形できる.
$\displaystyle N^{2}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g}{T}
\left[
\frac{M_{d} g}{{c_{p}}_{d}}
\left\{
\frac{ 1 +...
...}}
{M_{d} \left\{ 1 + \frac{(M_{v} - M_{d})X}{M_{d}} \right\}}
\right\}
\right]$  
    $\displaystyle -
\frac{g}{T} \frac{ (M_{v} - M_{d}) g X}{ R }.$ (41)

さらに凝縮成分が少ないとする近似式と 凝縮成分が多いとする近似式も併せて導出する. その導出は以下の通りである.

凝縮成分が少ない近似
 
(40) 式に (26), (36), (37) 式を 代入する. その結果, 凝縮成分が少ない場合の静的安定度の近似式が得られる.
$\displaystyle N^{2}$ $\textstyle \approx$ $\displaystyle \frac{g}{T}
\left[
\frac{M_{d} g}{{c_{p}}_{d}}
- \frac{M_{d} g}{{...
...\{
1 - \frac{ (M_{v} - M_{d})}{M_{d}} \frac{ \lambda X }{ R T}
\right\}
\right]$  
    $\displaystyle -
\frac{g}{T} \frac{ (M_{v} - M_{d})}{M_{d}} \frac{M_{d} g X}{ R }$  
  $\textstyle \approx$ $\displaystyle \frac{M_{d} g^{2}}{{c_{p}}_{d} T}
\left\{
\frac{\lambda X}{{c_{p}...
...g^{2}}{{c_{p}}_{d} T}
\frac{ (M_{v} - M_{d})}{M_{d}} \frac{ {c_{p}}_{d} X}{ R }$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{M_{d} g^{2}}{{c_{p}}_{d} T}
\left(
\frac{ \lambda}{ R T}
- ...
...{M_{d}}
\left( 1 - \frac{\lambda^{2} X}{{c_{p}}_{d} R T^{2}} \right)
\right\} X$  
  $\textstyle \approx$ $\displaystyle \frac{M_{d} g^{2}}{{c_{p}}_{d} T}
\left(
\frac{ \lambda}{ R T}
- ...
...left(
\frac{\lambda}{{c_{p}}_{d} T}
+ \frac{ (M_{v} - M_{d})}{M_{d}}
\right) X.$ (42)

凝縮成分が多い近似
 
(40) 式に (28), (38), (39) 式を代入する. その結果, 凝縮成分が多い場合の静的安定度の近似式が得られる.
$\displaystyle N^{2}$ $\textstyle \approx$ $\displaystyle \frac{g}{T}
\left[
\frac{M_{v} g}{{c_{p}}_{v}}
- \frac{M_{v} g T}...
...}{ R T}
\right\}
-
\frac{ (M_{v} - M_{v})}{M_{v}} \frac{M_{v} g X}{ R }
\right]$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g}{T}
\left[
\frac{M_{v} g}{{c_{p}}_{v}}
\left( 1 - \frac{{...
...lambda X }{ R T}
-
\frac{ (M_{v} - M_{d})}{M_{v}} \frac{M_{v} g X}{ R }
\right]$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{M_{v} g^{2}}{{c_{p}}_{v} T}
\left( 1 - \frac{{c_{p}}_{v} T}{\lambda} \right)$ (43)

3 木星の水雲を想定した計算例

本節では, 木星の水雲を想定した計算例を示す. 大気の乾燥成分として水素とヘリウムの混合大気(H/He = 0.095), 湿潤成分として水を想定する. そして温度, 相変化のエンタルピーを固定し, 水のモル比を変化させた場合の断熱温度減率と静的安定度の 変化を調べる.

計算で用いる物理量について考察する. 温度を固定した場合, 相変化のエンタルピーはクラウジウス-クラペイロンの式と 飽和蒸気圧の式から得られる. 水の飽和蒸気圧の式として Antoine の式を 利用する場合, その値は以下のように与えられる(化学便覧 改訂第四版).

$\displaystyle \ln{e}$ $\textstyle =$ $\displaystyle A - \frac{B}{C + T},$  
$\displaystyle ただし$   $\displaystyle A = 7.9186968d0$  
    $\displaystyle B = 1636.909d0$  
    $\displaystyle C = 224.92d0$  

ただし上記の $e$ の単位は mmHg であり, $T$ の単位は $^{\circ}$C なので, SI 単位系に変換すると,
$\displaystyle \ln{e} = \left(
A - \frac{B}{C + T - 273.15 }
\right) \ln{10} + \ln{133.322}$     (44)

(44) 式を (30) 式に代入すると, 相変化のエンタルピーは以下のように表現される.
$\displaystyle \lambda$ $\textstyle =$ $\displaystyle R T^{2} \DD{\ln{e}}{T}$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle R T^{2} \frac{B * \ln{10}}{ ( C + T - 273.15 )^2 }$ (45)

以上の議論を踏まえた上で計算に利用する物理量とパラメタをまとめると 以下のようになる.
定数一覧
 

  乾燥成分 湿潤成分(水)
分子量 (kg/mol) $18 \times 10^{-3}$ $2.323 \times 10^{-3}$
比熱 (J/K mol) 33.5 27.66
重力加速度 (m/s$^2$) 23.2
気体定数 8.314

実験に用いるパラメタ
 

  温度 相変化のエンタルピー
  (K) (J/K mol)
ケース 1 200 54417
ケース 2 300 44492
ケース 3 400 40518
ケース 4 500 38384

従来の研究では, 木星大気に含まれる水のモル比は十分小さいものとして 断熱温度減率および静的安定度を近似した式がしばしば用いられてきた. まずは木星大気におけるモル比を十分小さいとする近似の条件を求める. ついで十分大きいとする近似の条件も求めることとする 1.

凝縮成分の少ない近似の成立する条件 $\Deqref{lapserate:Cond_LapseRate_low}$ 式は以下のように書ける.

$M \approx M_{d}$ の成立条件

$\displaystyle \frac{(M_{v} - M_{d}) X}{M_{d}}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{(18.0 - 2.323) \times 10^{-3}}{ 2.323 \times 10^{-3} },$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle 6.7486 X
\ll 1.$  
$\displaystyle X$ $\textstyle \ll$ $\displaystyle 1.5 \times 10^{-1}.$ (46)

$c_{p} \approx {c_{p}}_{d}$ の成立条件

$\displaystyle \frac{( {c_{p}}_{v} - {c_{p}}_{d} ) X}{ {c_{p}}_{d}}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{23.5 - 27.66}{27.66}X,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle 0.21 X \ll 1.$  
$\displaystyle X$ $\textstyle \ll$ $\displaystyle 4.76.$ (47)

$\frac{ \lambda X}{R T} \ll 1$ の成立条件

$\displaystyle \frac{ \lambda X}{R T}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{44492}{8.31 \times 300} X$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle 17.8 X \ll 1.$  
$\displaystyle X$ $\textstyle \ll$ $\displaystyle 5.6 \times 10^{-2}.$ (48)

$\frac{ \lambda^{2} X}{ c_{p} R T^{2} } \ll 1 $ の成立条件

$\displaystyle \frac{ \lambda^{2} X}{ c_{p} R T^{2} }$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{(44492)^{2}}{30 \times 8.31 \times (300)^{2}} X$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle 88 X \ll 1.$  
$\displaystyle X$ $\textstyle \ll$ $\displaystyle 1.1 \times 10^{-2}.$ (49)

以上より, (36) 式の成立条件を全て満たす モル比の範囲は $X \ll 1.1 \times 10^{-2}$ である.

凝縮成分の多い近似の成立する条件 $\Deqref{lapserate:Cond_LapseRate_high}$ 式は以下のように書ける.

$M \approx M_{v}$ の成立条件

$\displaystyle X \approx 1.$     (50)

$c_{p} \approx {c_{p}}_{v}$ の成立条件

$\displaystyle X \approx 1.$     (51)

$\frac{ \lambda X}{R T} \gg 1$ の成立条件

$\displaystyle \frac{ \lambda X}{R T}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{44492}{8.31 \times 300} X$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle 17.8 X \gg 1.$  
$\displaystyle X$ $\textstyle \gg$ $\displaystyle 5.6 \times 10^{-2}.$ (52)

$\frac{ \lambda^{2} X}{ c_{p} R T^{2} } \gg 1 $ の成立条件

$\displaystyle \frac{ \lambda^{2} X}{ c_{p} R T^{2} }$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{(44492)^{2}}{30 \times 8.31 \times (300)^{2}} X$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle 88 X \gg 1.$  
$\displaystyle X$ $\textstyle \gg$ $\displaystyle 1.1 \times 10^{-2}.$ (53)

モル比の範囲は $X \le 1$ なので, (50)-(53) が 全て成立するモル比の範囲は $X = 1$ のごく近傍のみである. しかし木星大気において凝縮成分のモル比が 1 となる状況は まず考えられないので, 凝縮成分の多い近似が成立することは無い.

以下では木星大気条件での乾燥断熱温度減率, 湿潤断熱温度減率, 静的安定度について, 実際にプロットした結果を一覧する.

3.1 分子量と比熱

Fig.3, Fig.4 に分子量と比熱を モル比の関数としてプロットする. モル比は 1 割程度しか値が変化しないが, 分子量は桁で値が変化する.

図 3: 分子量
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm]{ps/MolWtMean.ps}
\end{center}\end{figure}

図 4: 比熱
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm]{ps/CpMean.ps}
\end{center}\end{figure}

3.2 乾燥断熱温度減率

Fig.5 で乾燥断熱温度減率をモル比の関数として プロットする. モル比が 0.1 を超えたあたりから急激に値が大きくなる. 乾燥断熱温度減率は凝結温度に依存しないので, どの実験設定の時でも値は変化しない.

図 5: 乾燥断熱温度減率. モル比が 0.1 を超えたあたりから急激に値が大き くなる. 赤線; 近似なし((22) 式)を用いた場合. 緑線: 凝縮成分の少ない近似((26) 式) を用いた場合. 青線: 凝縮成分の多い近似((28) 式) を用いた場合.
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm]{ps/LapseRateDry.ps}
\end{center}\end{figure}

3.3 湿潤断熱温度減率

Fig.6 において, case2 ($T = 300$ K)での 湿潤断熱温度減率をモル比の関数としてプロットする. 凝縮成分のモル比を増加させると 相変化に伴う熱の解放によって湿潤断熱温度減率はしだいに小さくなる. しかしモル比が 0.1 を超えたあたりから分子量変化の効果 ($M$ $M_{d} = 2.323 \times 10^{-3}$ から $M_{d} = 18 \times 10^{-3}$ まで変化)のために値が増加に転じる.

相変化に伴う熱の解放の効果を見るために, (33)式の右辺の $(1 + \lambda X/ RT)/ (1 + {\lambda }^{2}X / c_{p} R T^{2})$ をプロットす る(Fig.7 参照). モル比を増やしていくと値が小さくなっていくが, モル比が 0.1 を超えるあたりからは最大値に漸近するようになる.

(50)-(53) で 示したように, 木星大気において凝縮成分が多いとする条件 (38) は現実的ではない. しかし, モル比が $1.0 \times 10^{-1} \le X \le 1 $ 程度の場合に成立する 近似式を作れないわけではない. その場合は (53) の み成立することを考え,

$\displaystyle \DD{T}{z} \approx - \frac{M_{d} g R T^{2} }{\lambda^{2}}
\left\{
...
...\frac{ \lambda }{R T}
+ \frac{(M_{v} - M_{d}) \lambda X }{M_{d} R T}
\right\}
,$     (54)

とすればよい. (54) を Fig.8に示す.

Fig.9 には, case1-case4 の場合として, 温度 $T$ を変化させた場合の湿潤断熱温度減率を示す.

図 6: $T = 300$ K での湿潤断熱温度減率. 凝縮成分のモル比を増加させると 相変化に伴う熱の解放によって湿潤断熱温度減率はしだいに小さくなる. しかしモル比が 0.1 を超えたあたりから分子量変化の効果 ($M$ $M_{d} = 2.323 \times 10^{-3}$ から $M_{d} = 18 \times 10^{-3}$ まで変化)によって, 値が大きくなる. 赤線; 近似なし((33) 式)を用いた場合. 緑線: 凝縮成分の少ない近似((37) 式) を用いた場合. 青線: 凝縮成分の多い近似((39) 式) を用いた場合.
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm]{ps/LapseRate.ps}
\end{center}\end{figure}

図 7: $(1 + \lambda X/ RT)/ (1 + {\lambda }^{2}X / c_{p} R T^{2})$ の プロット. 赤線; 近似なしの場合. 緑線: 凝縮成分の少ない条件((36) 式) が成立する場合. 青線: 凝縮成分の多い条件((38) 式) が成立する場合.
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm]{ps/EffLatentHeat.ps}
\end{center}\end{figure}

図: $T = 300$ K での湿潤断熱温度減率. 赤線, 緑線, 青線は Fig.6 に同じ. 紫線: (54) 式を用いた場合.
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm]{ps/LapseRate2.ps}
\end{center}\end{figure}

図 9: 温度 $T$ を変化させた場合の湿潤断熱温度減率. 緑線は case1 ($T=200$K), 赤線は case2 ($T = 300$K), 青線は case3 ($T=400$K), 紫線は case4 ($T=500$K).
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm]{ps/LapseRateList.ps}
\end{center}\end{figure}

3.4 静的安定度

Fig.10 において, case2($T = 300$K)での静的安定度を プロットする. 凝縮成分のモル比を増加させると, 乾燥断熱温度減率はほぼ一定にも関わらず湿潤断熱温度減率は 緩やかに減少するので, 静的安定度の値はゆっくりと増加する. しかしモル比が 0.1 を超えたあたりから分子量変化の効果 ($M$ $M_{d} = 2.323 \times 10^{-3}$ から $M_{d} = 18 \times 10^{-3}$ まで変化)によって, その値が急激に増加する.

Fig.11 には, case1-case4 の場合として, 温度 $T$ を変化させた場合の静的安定度を示す.

図 10: $T = 300$ K での静的安定度. 凝縮成分のモル比を増加させると, 乾燥断熱温度減率はほぼ一定にも関わらず湿潤断熱温度減率は 緩やかに減少するので, 静的安定度の値はゆっくりと増加する. しかしモル比が 0.1 を超えたあたりから分子量変化の効果 ($M$ $M_{d} = 2.323 \times 10^{-3}$ から $M_{d} = 18 \times 10^{-3}$ まで変化)によって, その値が急激に増加する. 赤線; 近似なし((40) 式)を用いた場合. 緑線: 凝縮成分の少ない近似((42) 式) を用いた場合. 青線: 凝縮成分の多い近似((43) 式) を用いた場合. 紫線: 分子量の増加する効果を調べるために, 近似なしの式 (40) において, 分子量と比熱を定数と見なした場合.
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm]{ps/Stab.ps}
\end{center}\end{figure}

図 11: 温度 $T$ を変化させた場合の静的安定度. 静的安定度は温度の逆数に 比例するので, 温度が高くなるほど静的安定度の値は小さくなる. 緑線は case1 ($T=200$K), 赤線は case2 ($T = 300$K), 青線は case3 ($T=400$K), 紫線は case4 ($T=500$K).
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm]{ps/StabList.ps}
\end{center}\end{figure}

3.5 多数の凝縮成分を考慮した場合の木星大気の静的安定度

Table 1 に示された化学種を含む仮想的な木星大気の静的安定度 を計算し, 水雲下部における静的安定度の最大値と水のモル比との関係を Fig.12 に示す. 乾燥成分である H と He の存在度は太陽系元素存在度 (Anders and Grevesse, 1989) に等しいとし, 凝縮成分である C, N, O, S の存在度は太陽系元素存在度の 1, 5, 10, 30, 50 倍として計算する. Fig.12 から, 1) 静的安定度は水の存在度に比例しないこと, 2) 静的安定度が増加しない理由は静的安定度は温度の逆数に比例するためであ ることが示される.

Fig.13 は, Achterberg and Ingersoll (1989) の指摘した 静的安定度と水のモル比の比例関係((42) 式)と, 我々の計算で得られた静的安定度の最大値, さらに (40) 式をプロットしたものである. (42), (40) 式を用いる際には凝縮成分は 水のみ考慮した. Fig.13 から明らかなように, Achterberg and Ingersoll (1989) の指摘した比例関係は, 水の存在度を 太陽系元素存在度の数倍以上増加させた場合には成立しない.

Fig.14 は木星大気の凝縮成分の存在度を, 太陽系元素存在度の 1, 5, 10 倍した時の静的安定度を示す. 木星では H$_2$O(s), NH$_4$SH(s), NH$_3$(s) が凝縮し, 太陽系元素存在度の 5 倍, 10 倍とした場合には NH$_3$-H$_2$S-H$_2$O(liq) も凝縮する. 静的安定度はそれぞれの凝縮成分の凝結高度に対応したピークを持つ. 木星大気において最も安定な成層は H$_2$O によって形成される.


表 1: モデル中で考慮する大気成分. (g) は気相, (l) は液相, (s) は固相を表す.
gas (g) liquid (l) solid (s)
H$_2$, He, H$_2$O, H$_2$O, NH$_3$, H$_2$O, NH$_3$, H$_2$S,
CH$_4$, NH$_3$, H$_2$S H$_2$S, CH$_4$, CH$_4$, NH$_4$SH
spc


図 12: 木星大気に太陽組成の 1, 5, 10, 30, 50 倍の水が存在すると場合に, 水雲下端において得られた静的安定度の最大値. 静的安定度は温度の逆数に 比例するので, 温度が高くなるほど静的安定度の値は小さくなる. 星印は水雲下端において得られた静的安定度の最大値, 実線は水雲下端の温度を用いて (40) 式より求めた 静的安定度. 緑線は $T = 271.9$ K, 赤線は $T = 304.5$ K, 青線は $T = 324.5$ K, 紫線は $T = 376.6$ K, 藍色線は $T = 422.6$ K である. ただし (40) 式を利用する際には大気の凝縮成分は水のみとした.
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm]{ps/Jupiter.ps}
\end{center}\end{figure}

図 13: 静的安定度の最大値と Acterberg and Ingersoll (1989) の指摘した 静的安定度の近似式. Achterberg and Ingersoll (1989) の指摘した比例関係は, 水の存在度を 太陽系元素存在度の数倍以上増加させた場合には成立しない. 星印は水雲下端において得られた静的安定度の最大値, 緑線はAchterberg and Ingersoll (1989) の指摘した比例の式 (42) より求めた静的安定度. 赤線は (40) 式より求めた 静的安定度($T = 271.9K$). ただし (42), (40) 式を 利用する際には大気の凝縮成分は水のみとした.
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm]{ps/Jupiter2.ps}
\end{center}\end{figure}

図 14: 木星での静的安定度. 静的安定度のピークは凝縮に起因し, 下から順に, H$_2$O 水溶液(5 $\times $ solar, 10 $\times $ solar のみ), 氷, 硫化アンモニウム, アンモニア氷に起因する. 赤線: 1 $\times $ solar, 緑線: 5 $\times $ solar, 青線: 10 $\times $ solar. H$_2$O の凝縮による安定成層が最も大きい.
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm]{ps/jupiter.ps}
\end{center}\end{figure}

4 従来の論文との比較

従来の論文では, そもそも気塊に含まれる凝縮成分は少ないと仮定し, 気塊には乾燥成分しか含まれないが, 周囲の大気には乾燥成分と凝縮成分が 存在するような系を考えてきた. 本節では従来の論文に従って,

と仮定した場合について静的安定度の定式化を行い, 従来の論文中の式の導出を 行う.

気塊と大気の分子量が異なるため, $M = M^{*}$ を仮定していない (7) 式から考察を始める必要がある. $M^{*} = M_{d}$ を (7) 式に代入すると,

$\displaystyle N^{2} =
\frac{g}{T}
\left(
\DD{T}{z} + \frac{M g}{{c_{p}}_{d}}
\right)
-
g
\left(
\Dinv{M} \DD{M}{z}
\right).$     (55)

となる. この式を (10) 式と比較すると, 気塊の分子量の部分だけ異なっている. さらに大気の分子量 $M = (1 - rX^{sat}) M_{d} + rX^{sat} M_{v}$ を代入すると,
$\displaystyle N^{2}
=
\frac{g}{T}
\left(
\DD{T}{z} + \frac{M g}{{c_{p}}_{d}}
\right)
-
g \left(
\frac{r (M_{v} - M_{d})}{M} \DD{X^{sat}}{z}
\right)$     (56)

となる. また, (55) 式を仮温度 $T_{v} = M_{d} T/ M $ を用いて表現すると,
$\displaystyle N^{2} =
\frac{g}{T_{v}}
\left(
\DD{T_{v}}{z} + \frac{M_{d} g}{{c_{p}}_{d}}
\right)$     (57)

となる.

4.1 Achterberg and Ingersoll (1989)

Achterberg and Ingersoll (1989) は静的安定度, 仮温度, 湿潤擬断熱温度減率 を以下のように与えた 2.

$\displaystyle N^{2} =
\frac{g}{T_{v}}
\left(
\DD{T_{v}}{z} + \frac{g}{{c_{p}^{\dagger}}_{d}}
\right),$     (58)
$\displaystyle T_{v} =
\frac{T }{1 + (\varepsilon - 1) e /p },$     (59)
$\displaystyle \DD{T}{z} = - \frac{g}{c_{p}^{\dagger}}
\left(
\frac{ 1 + \frac{\...
...mbda^{\dagger}}^{2} \varepsilon q}{R^{\dagger} c_{p}^{\dagger} T^{2}} }
\right)$     (60)

ただし添字 $\dagger$ の付いた量は単位質量当たりの量で, $R^{\dagger} =
R/M$ は大気の単位質量当たりの気体定数, $c_{p}^{\dagger} = c_{p}/M$ は大 気の単位質量当たりの比熱, ${c_{p}^{\dagger}}_{d}=c_{p}/M_{d}$ は単位質量 当たりの乾燥成分の比熱, $\lambda^{\dagger}=\lambda/M_{v}$ は単位質量当た りの潜熱である. $\varepsilon = M_{v}/M_{d}$ は可凝縮成分の分子量と乾燥 成分の分子量との比, $e$ は可凝縮成分の飽和蒸気圧, $q$ は可凝縮成分の混合 比である.

以下では, 前節で求めた静的安定度, 仮温 度, 湿潤断熱減率が, それぞれ (58) - (60) 式で 表現できることを示す. ただし彼らの計算では $r = 1$ を仮定している.

初めに静的安定度の式 (58) は, ([*]) 式中の単位モル当たり の量を単位質量当たりに変換することで求めることができる.

$\displaystyle N^{2}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g}{T_{v}}
\left(
\DD{T_{v}}{z} + \frac{M_{d} g}{{c_{p}}_{d}}
\right)$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g}{T_{v}}
\left(
\DD{T_{v}}{z} + \frac{g}{{c_{p}^{\dagger}}_{d}}
\right)$  

次に仮温度の式 (59) は, 仮温度の定義式を変形することで導かれる.
$\displaystyle T_{v}$ $\textstyle =$ $\displaystyle T \frac{M_{d}}{M} ,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle T \frac{M_{d}}{M_d (1 - X) + M_{v} X} ,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle T \frac{M_{d}}{M_d (p - e)/p + M_{v} e/p } ,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle T \frac{M_{d} p}{M_d p + (M_{v} - M_{d}) e } ,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle T \frac{1}{1 + (M_{v} - M_{d})/M_{d} e/p } ,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{T}{1 + (\varepsilon - 1) e/p }.$  

最後に (32) に可凝縮物質が少ないという条件を与えることで (60) が得られることを示す. 凝結成分が少ない場合,
    $\displaystyle q
= \frac{M_{v} X}{M_{d} (1 - X) + M_{v} X}
\approx \frac{M_{v}}{M_{d}} X.$ (61)
    $\displaystyle M \approx M_{d}$ (62)

となるので, この関係を用いて (32) 式を変形し, また (32) 式中の単位モル当たりの量を単位質量当たりの量に変換すると,
$\displaystyle \DD{T}{z}$ $\textstyle =$ $\displaystyle - \frac{M g}{c_{p}}
\left(
\frac{ 1 + \frac{ \lambda X}{R T}}
{ 1 + \frac{ \lambda^{2} X}{ c_{p} R T^{2}} }
\right),$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle - \frac{M g}{( M c_{p}^{\dagger} ) }
\left(
{ 1 + \frac{ (M_{v} \...
...M_{d} / M_{v})}
{ (M_{d} c_{p}^{\dagger}) (M_{d} R^{\dagger}) T^{2}} }
\right),$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle - \frac{g}{c_{p}^{\dagger}}
\left(
\frac{ 1 + \frac{\lambda^{\dag...
...da^{\dagger}}^{2} \varepsilon q}{R^{\dagger}
c_{p}^{\dagger} T^{2}} }
\right) .$  

4.2 中島 (1998)

中島 (1998) は湿潤断熱温度減率と静的安定度を以下のように与えた. ただし物理量を示す文字を変えてある.

$\displaystyle \DD{T}{z}$ $\textstyle =$ $\displaystyle - \frac{g}{{c_{p}^{\dagger}}_{d}}
\left(
\frac{ 1 + \frac{\lambda...
...lambda^{\dagger}}^{2} q}{R_{v}^{\dagger} {c_{p}^{\dagger}}_{d} T^{2}} }
\right)$ (63)
  $\textstyle =$ $\displaystyle - \frac{g}{{c_{p}^{\dagger}}_{d}}
\left\{ 1 - \left(
\frac{\lambd...
...\right)
\frac{\lambda^{\dagger} q^{\dagger}}{{c_{p}^{\dagger}}_{d} T}
\right\}.$ (64)
$\displaystyle N^{2}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g}{T}
\left(
\DD{T}{z} + \frac{g}{{c_{p}^{\dagger}}_{d}}
\right)
+ g \left(\frac{M_{d}}{M_{v}} - 1 \right) \DP{ (rq)}{z},$ (65)
  $\textstyle \approx$ $\displaystyle \frac{g^{2}}{{c_{p}^{\dagger}}_{d} T}
\left(
\frac{\lambda^{\dagg...
...r}}{{c_{p}^{\dagger}}_{d} T}
+ \left(1 - \frac{M_{d}}{M_{v}} \right)
\right\} q$ (66)

ただし添字 $\dagger$ の付いた量は単位質量当たりの量で, $R_{d}^{\dagger} = R/M_{d}$ は乾燥成分の単位質量当たりの気体定数, $R_{v}^{\dagger} = R/M_{v}$ は可凝縮成分 の単位質量当たりの気体定数, ${c_{p}^{\dagger}}_{d}=c_{p}/M_{d}$ は単位質量当た りの乾燥成分の比熱, $\lambda^{\dagger}=\lambda/M_{v}$ は単位質量当たりの潜熱 である. $q$ は上昇流域での可凝縮成分の混合比であり, 気塊の周囲の大 気の混合比を湿度 $r$ を用いて $r q$ とした.

以下では, 前節で求めた湿潤断熱温度減率と静的安定度が, それぞれ (63), (65) 式で表現されることを示す. また ([*]) と (65) 式を変形することで (64) と (66) 式がそれぞれ導かれることを示す.

(63) 式は (60) 式において, $M \approx M_{d},
R^{\dagger}_{v} = R^{\dagger} / \varepsilon$ とすることで直ちに求ま る. さらに凝縮成分の少ないとする条件が成立する場合には $ 1 \gg
\frac{{\lambda^{\dagger}}^{2} q}{R_{v}^{\dagger} {c_{p}^{\dagger}}_{d}
T^{2}} $ となるので, (64) 式は以下のように導出される.

$\displaystyle \DD{T}{z}$ $\textstyle =$ $\displaystyle - \frac{g}{{c_{p}^{\dagger}}_{d}}
\left(
\frac{ 1 + \frac{\lambda...
...mbda^{\dagger}}^{2} q}{R_{v}^{\dagger} {c_{p}^{\dagger}}_{d} T^{2}} }
\right) ,$  
  $\textstyle \approx$ $\displaystyle - \frac{g}{{c_{p}^{\dagger}}_{d}}
\left( 1 + \frac{\lambda^{\dagg...
...\lambda^{\dagger}}^{2} q}{R_{v}^{\dagger} {c_{p}^{\dagger}}_{d} T^{2}}
\right),$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle - \frac{g}{{c_{p}^{\dagger}}_{d}}
\left\{ 1 - \left(
\frac{\lambd...
...\right)
\frac{\lambda^{\dagger} q^{\dagger}}{{c_{p}^{\dagger}}_{d} T}
\right\}.$  

ただし $q$ の 2 次の項は無視した. ちなみに木星の温度条件の場合, この近似が成立する条件はおおよそ $q
\ll 2.0 \times 10^{-2}$ である.

静的安定度の式 (65) は, 静的安定度の式 (55) において, 単位モル当たりの 量を単位質量当たりの量に変換し, 凝縮成分の少ない条件下でのモル比と混合比の関係式 (61) および分子量の関係 (62) を用いることで求まる.

$\displaystyle N^{2}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g}{T}
\left(
\Gamma_{m} + \frac{M g}{{c_{p}^{\dagger}}_{d} M}
\right)
-
g \left(
\frac{r (M_{v} - M_{d})}{M} \DD{X}{z}
\right)$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g}{T}
\left(
\Gamma_{m} + \frac{ g}{{c_{p}^{\dagger}}_{d}}
...
...
g \left(
\frac{r (M_{v} - M_{d})}{M_{d}} \frac{M_{d}}{M_{v}} \DD{q}{z}
\right)$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g}{T}
\left(
\Gamma_{m} + \frac{ g}{{c_{p}^{\dagger}}_{d}}
\right)
+
g \left(
\frac{M_{d}}{M_{v}} - 1
\right) \DD{(r q)}{z}$  

ただし $dT/dz = \Gamma_{m}$ とした. さらに (65) 式の変形を 行う. (31) 式を $dq/dz$ の式に書き換えると,
$\displaystyle \DD{ ( r q )}{z}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \left(
\frac{ \lambda^{\dagger} M_{v} }{ R^{\dagger}_{d} M_{d} T^{2}} \DD{T}{z}
+ \frac{M g }{ R^{\dagger}_{d} M T}
\right) (r q) ,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \left(
- \frac{ \lambda^{\dagger} }{ R^{\dagger}_{v} T^{2}} \frac{g}{{c_{p}^{\dagger}}_{d}}
+ \frac{g }{ R^{\dagger}_{d} T}
\right) (r q) ,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g}{{c_{p}^{\dagger}}_{d} T}
\left(
\frac{ {c_{p}^{\dagger}}...
...\dagger}_{d} }
- \frac{ \lambda^{\dagger} }{ R^{\dagger}_{v} T}
\right) (r q) .$ (67)

となる. ただし $q$ は小さいので, $dT/dz \approx - g /{c_{p}^{\dagger}}_{d}$ とした. (67) 式と (64) 式を (65) 式に 代入することで, (66) 式が得られる.
$\displaystyle N^{2}$ $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g}{T}
\left(
\Gamma_{m} + \frac{ g}{{c_{p}^{\dagger}}_{d}}
\right)
+
g \left(
\frac{M_{d}}{M_{v}} - 1
\right) \DD{(r q)}{z}$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g}{T}
\left[
\frac{g}{{c_{p}^{\dagger}}_{d}}
\left\{ \left(...
...{d} }
- \frac{ \lambda^{\dagger} }{ R^{\dagger}_{v} T}
\right) (r q)
\right\} ,$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \frac{g^{2}}{{c_{p}^{\dagger}}_{d} T}
\left(
\frac{\lambda^{\dagg...
...{c_{p}^{\dagger}}_{d} T}
+
r \left(
1 - \frac{M_{d}}{M_{v}}
\right)
\right\} q.$  

この文書について...

静的安定度の計算

この文書はLaTeX2HTML 翻訳プログラム Version 2002-2-1 (1.70)

Copyright © 1993, 1994, 1995, 1996, Nikos Drakos, Computer Based Learning Unit, University of Leeds,
Copyright © 1997, 1998, 1999, Ross Moore, Mathematics Department, Macquarie University, Sydney.

日本語化したもの( 2002-2-1 (1.70) JA patch-1.8 版)

Copyright © 1998, 1999, Kenshi Muto, Debian Project.
Copyright © 2001, 2002, Shige TAKENO, Niigata Inst.Tech.

を用いて生成されました。

コマンド行は以下の通りでした。:
latex2html -no_footnode -local_icons -short_extn -bottom_navigation -no_contents_in_navigation -no_auto_link -show_section_numbers -split 3 stability.tex.

翻訳は SUGIYAMA Ko-ichiro によって 平成17年8月21日 に実行されました。


... ついで十分大きいとする近似の条件も求めることとする1
水以外の凝縮成分であるメタンやアンモニアについて同様の議論を行っても, 凝縮成分の少ない近似と多い近似が成立する条件はほとんど変わらない. 木星条件での化合物の代表的な数値は以下の通り. 水, アンモニア, メタンの潜熱(蒸発エンタルピー)と凝縮温度は化学 便覧の第 9.4 節「転移のエンタルピー」より抜粋.
物理量 アンモニア メタン
潜熱 [J/mol] $40.66 \times 10^{3}$ $23.35 \times 10^{3}$ $8.180 \times 10^{3}$
凝縮温度 [K] $373.15$ $195.40$ $90.68$
... を以下のように与えた2
Achterberg and Ingersoll (1989) の式には誤植がある.



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SUGIYAMA Ko-ichiro 平成17年8月21日