: 地球流体理論マニュアル
: 火星現象論
火星現象論: 火星起源の隕石
地球流体電脳倶楽部
1996 年 9 月 27 日
概要:
火星起源と考えられている隕石(SNC 隕石)を概観する.
火星起源と考えられている隕石群を SNC 隕石と呼んでいる.
これらは火星に隕石衝突があった際に火星を離脱し,後に地球に落下したと
考えられている.
次のような特徴を持つ(Carr, 1996).
- 全部で 10 個.
そのうち 9 個が火山岩.
放射性元素による年代測定は 0.15-1.3 Ga に形成されたことを示す
(ALH84001 は 4.5 Ga).
- 結晶の堆積組織が見られる.
メルト内の結晶分化で作られたと想像される.
- 衝撃波の影響があまりない.
よって衝突中心から離れた所にあった.
- 結晶のサイズがあまり大きくない.
親メルトは地殻の浅い所にあった,または地表に押し出されたようなものであった.
10 個の SNC 隕石は 3+ のグループに分類される(Carr, 1996).
- Shregottites
Shergotty 隕石に代表される隕石.
玄武岩.
- Nakhlites
Nakhla 隕石に代表される.
カンラン石.
- Chassigny
ダナイト(カンラン石+輝石(cpx+opx)).
これらとは別に ALH84001 という隕石がある.
これはほとんど輝石からなる.
これらが火星起源であると考えられている理由として,次のような
ことが挙げられている(Carr, 1996).
- いくつかのものは実際に落下してきたのが観測されている.
よって少なくとも隕石であることは確か.
- 年代測定は 0.15-1.3 Ga に形成されたことを示していて,この時代に
火星活動が存在したと考えられる天体は火星だけ.
- 酸素同位体比が地球の岩石や他の隕石と異なる(図1).
- 揮発性元素に富み,親銅性元素に不足している.
これも地球の岩石とは異なる.
- 岩石に含まれていた気体の成分,同位体比が火星大気に近い(図2).
図1 SNC 隕石の酸素同位体比(Clayton and Mayeda, 1983; Carr, 1996, 図1-12)
図2 SNC 隕石(EETA79001)と火星大気中の気体の数密度比(Wines and Pepin, 1988;
Carr, 1996, 図1-13)
- Carr, M.H., 1996:
Water on Mars,
Oxford Univ.Press, 229pp.
- Clayton, R.N. and Mayeda, T.K., 1983:
Oxygen istopes in euchrites, shergottites, nakhlites
and chassignites,
Erath Planet.Sci.Lett., 62, 1-6
- Wines, R.C. and Pepin, R.O., 1988:
Laboratory shock emplacement of noble gases and carbon dioxide
into basalt and implications for trapped gases
in shergottite EETA 79001,
Geochim. Cosmoshim. Acta., 52, 295-307.
謝辞
本稿は 1996 年に東京大学地球惑星物理学科で行われていた,
固体火星セミナーでのセミナーノートがもとになっている.
小高正嗣によって地球流体電脳倶楽部版「火星現象論」
として書き直された (1996/09/27).
構成とデバッグに協力してくれたセミナー参加者のすべてにも
感謝しなければならない.
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Odaka Masatsugu
平成19年5月29日