地球流体電脳倶楽部
1996 年 12 月 12 日
風についての全球的な観測データは無い. そのために, 風についての情報はバイキング着陸船による1点観測か, 間接的な証拠に頼るしかない. 以下にそのような例を示す. (Leovy,1979)
( N, W)の地点で (全球的なdust stormの前)の時期には西風が吹いていた. dust stormの期間中は東風が吹いていた.
の領域では 冬は西風が吹いている.
気温の観測結果から次の温度風の関係式を使ってmean zonal windを
推定することができる.
:mean zonal wind
a:火星半径
:zonally averaged temperature
:コリオリパラメーター
:緯度
をそれぞれ表す.
この式を使って計算した結果が図1である.
ただし, この場合バイキングで観測した温度分布は
zonal meanにもかかわらずに等しいということと
さらに, Carr (1996, p10) によれば, バイキング着陸地点1での 風速は次のようであった.
図2はPollack et al(1981)による大循環モデルの計算結果である. これはダストが無いCO大気モデルである. このモデルでは火星の表面地形とアルベドの分布は考慮してある. 図2の横軸は緯度をあらわしており, 縦軸は高さを気圧であらわしている. 図の右側には対応するおよその高度(Km)が示してある. 図2の上の図はmeridional windの図である. 図2の下の図はzonal windの図である. まずmeridional windの図について説明する. 図の中でハッチを付けたのは北風の領域である. それ以外は南風の領域である. 赤道域の地表付近は南風で, 上空は北風になっている. つまりこの計算では赤道をはさんだ南北循環が生じている. この循環によりS付近で下降流が生じる. この下降流が南半球(冬半球)極域上空に高温域が 存在する原因であると考えられている.
一方, zonal windの図ではハッチを付けた所は東風が吹いている領域である. それ以外は西風が吹いている領域である. 南半球(冬半球)の中緯度の上空に西風の強風帯が存在する.
謝辞
本稿は 1989 年から 1993 年に東京大学地球惑星物理学科で行われていた, 流体理論セミナーでのセミナーノートがもとになっている. 原作版は石渡正樹による「火星現象論」 (1989/05/19) であり, 林祥介によって地球流体電脳倶楽部版「火星現象論」 として書き直された (1996/06/23). その後小高正嗣によって加筆修正された (1996/12/12). 構成とデバッグに協力してくれたセミナー参加者のすべてにも 感謝しなければならない.
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