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5 放射

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0.9 はじめに

放射過程としては 太陽から射出された短波放射と地球において射出された長波放射とに分けてと り扱う. 6% latex2html id marker 8813
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0.10 入射放射

この節では大気上端における中心星(太陽系惑星の場合は太陽) からの入射放射を与える式についての解説をおこなう.

0.10.1 入射フラックス分布

大気上端における入射放射フラックスの分布の式を書きくだす.

入射フラックス $F_S^I$ は, 太陽定数を $S_0$, 太陽地球間の距離の, その時間平均値との比を $r_S$, 入射角を $\zeta$ とすると,

\begin{displaymath}
F_S^I (\lambda, \varphi)= - S_0 r_S^{-2} \cos \zeta .
\end{displaymath} (89)

$\zeta$ は次の式で与えられる.

\begin{displaymath}
\cos \zeta = \cos \varphi \cos \delta_S \cos H
+ \sin \varphi \sin \delta_S
\end{displaymath} (90)

$\delta_S$ は太陽の赤経, $H$は時角(地方時から $\pi$ を引いたもの)である.

0.10.2 年平均日射の場合

年平均入射量および年平均入射角は, 近似的に, 次のようになる.

\begin{displaymath}
\overline{F_S^I} (\varphi)
\simeq - S_0 ( A_{ins} + B_{ins} \cos^2 \varphi ) ,
\end{displaymath} (91)


\begin{displaymath}
\overline{\cos \zeta} \simeq A_{\zeta} + B_{\zeta} \cos^2 \varphi .
\end{displaymath} (92)

大気上端におけるアルベド $\mathcal{A}$ を考慮すると

\begin{displaymath}
\overline{F_S^I} (\varphi)
\simeq - S_0 (1 - \mathcal{A})( A_{ins} + B_{ins} \cos^2 \varphi )
\end{displaymath} (93)

となる. また, モデルで使用する場合 $\overline{\cos \zeta}$ よりも $\overline{\sec \zeta}$ の方が 便利である. 7 $\overline{\sec \zeta}$ の式は
$\displaystyle \overline{\sec \zeta} \simeq \frac{1}{A_{\zeta} + B_{\zeta} \cos^2 \varphi} .$     (94)

$A_{ins}$, $B_{ins}$, $A_{\zeta }$, $B_{\zeta }$ の値 を Table 5.1 に示す.


表 5.1: 各惑星における $A_{ins}$, $B_{ins}$, $A_{\zeta }$, $B_{\zeta }$ の値
惑星名 $A_{ins}$ $B_{ins}$ $A_{\zeta }$ $B_{\zeta }$
地球 0.127 0.183 0.410 0.590
Ains


0.10.3 同期回転惑星の場合の入射フラックス

$\delta$ を外から与える. これは太陽直下点の緯度. 次に太陽直下点の経度(degree) $\lambda_{subsolar}$ を与える. これにより時角は

$\displaystyle H = \lambda - \lambda_{subsolar} * \frac{180}{\pi}$     (95)

となる.
$\displaystyle \cos \zeta = \sin \varphi \sin \delta
+ \cos \varphi \cdot \sqrt{1 - \sin^2 \delta} \cdot
\cos H$     (96)

入射フラックス分布は
$\displaystyle F_S^I (\lambda, \varphi) = - S_0 (1 - \mathcal{A}) \cos \zeta$     (97)

0.10.4 日変化あり・季節変化ありの場合

ここでは, 日変化も季節変化もある場合の 入射フラックスの式を書き下す.

この場合はまだ dcpam3 に実装されていない.

黄経は春分点を 0 度にしてはかる. 理科年表(1995) によれば, 地球の昇交点黄経は 354.865 度.

時角 $H$ は, 太陽直下点から考えている点まで測った 経度方向の角度のようだ.

太陽傾斜角 $\delta$ は太陽直下点の緯度. 太陽傾斜角は以下の式で与えられる.

$\displaystyle \sin \delta = \sin \theta_p
\sin( \Phi_0 + \Phi )$     (98)

$\theta_p$ は赤道傾斜角(いわゆる自転軸の傾き), $\Phi_0 + \Phi$ は春分点から測った惑星の位置を あらわす角度である ($\Phi_0$ は春分点から測った近日点での角度, $\Phi$ は近日点から測った惑星の位置をあらわす角度). これって黄経で良いの?????

agcm5 においては, 1 年の最初の日が 0 度, 最後の日が 360 度になるように 日付けを角度 $\Phi_{date}$ に換算し, $\sin \delta$ の 計算を

$\displaystyle \sin \delta
= \sin \theta_p
\sin \left\{ \left( \Phi_{date} - \Phi_{eqn} \right) \frac{\pi}{180} \right\}$     (99)

と行っていた. なお, 離心率を真面目に考えるとこの単純な式ではダメである.

agcm5 における $\Phi_{eqn}$ 8のデフォルト値 の 110 度は何月何日か?

$\displaystyle 110 / 360 * 365 = 111$     (100)

1 月 1 日から 111 日目は 4 月 21 日. これ, AGCM5 のバグじゃないか? 変数名から考えても $\Phi_{eqn}$ (agcm5 における変数 EQNORB) は春分点の位置だと思う. でもまだ, 符号があってないと思う. 春分点で考えれば, どっちにしろ
$\displaystyle \sin \delta = 0$     (101)

太陽の天頂角 $\zeta$ は, 考えている点において 天頂から太陽まで測った角度. 天頂角 $\zeta$ は以下の式で与えられる(佐藤ノートの(1)式).

$\displaystyle \cos \zeta = \sin \varphi \sin \delta
+ \cos \varphi \cdot \sqrt{1 - \sin^2 \delta} \cdot
\cos H$     (102)

時角 $H$ は以下の式で与えられる. 9
$\displaystyle H = TimeRad * 2 \pi - \pi + \lambda$     (103)

以上の緒量を用いて入射フラックス分布は次のように与えられる.

$\displaystyle F_S^I (\lambda, \varphi) = - S_0 (1 - \mathcal{A}) \cos \zeta$     (104)



地球の場合の軌道パラメータの値は以下の通り.

赤道傾斜角 $\theta_p$ 地球の場合 23 度

$\cos \zeta > 0$ の場合 ( $-pi/2 \leq \zeta \leq < \pi/2$), 太陽は「昇っている」ので昼間. よって, 日射量は

$\displaystyle F_S = - S_0 (1 - \mathcal{A}) \cos \zeta$     (105)

$\cos \zeta < 0$ の場合, 太陽は「沈んでいる」ので夜間. よって, 日射量は
$\displaystyle F_S = 0$     (106)

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\setcounter{footnote}{9}\fnsymbol{footnote} 99 9% latex2html id marker 8917
\setcounter{footnote}{9}\fnsymbol{footnote} 99

0.11 短波放射

0.11.1 短波放射フラックス

短波放射過程においては, 水蒸気とそれ以外の大気による吸収のみを考慮し 多重散乱は考慮しない. 吸収係数の異なった$N_S$個の波長帯を 考える(k-distribution method). $F_S$は,

$\displaystyle F_S(z)$ $\textstyle =$ $\displaystyle \sum_i^{N_S} a_i
\left[
(1-\alpha_A) F_S^I
\exp \left( - \tau_{S,i}(z) \sec \zeta \right)
\right.$  
    $\displaystyle \left. - \alpha_g (1-\alpha_A) F_S^I
\exp \left( - \tau_{S,i}(0) ...
... \right)
\exp \left( - ( \tau_{S,i}(0)-\tau_i(z) ) \sec \zeta_0 \right)
\right]$ (107)

ここで, $F_S^I$ は大気上端からの入射, $\zeta$ は入射角, $\zeta_0$ は散乱光の相当入射角で, $\sec \zeta_0 = 1.66$ とする. $\alpha_A$ は大気の散乱によるアルベドであり, 一定値を与える. $\alpha_g$ は地表面のアルベドである.

$\tau_{S,i}(z)$は, 大気上端を0とした光学的厚さであり,

\begin{displaymath}
\tau_{S,i}(z) = \int_z^\infty k_{S,i} \rho q dz
+ \int_z^\infty \bar{k}_{S,i} \rho dz
\end{displaymath} (108)

$k_{S,i}$ は波長帯 $i$ の水蒸気に対する吸収係数, $\bar{k}_{S,i}$ は波長帯 $i$ の水蒸気以外の大気に対する吸収係数である. これら吸収係数は$z$等に依存しない一定値を与える. $a_i$ は波長帯 $i$ の放射エネルギーの全体に対する割合である.

地表面での吸収は,

\begin{displaymath}
F_S(0) = \sum_i^{N_S} a_i
(1-\alpha_g) (1-\alpha_A) F_S^I
\exp ( - \tau_{S,i}(0)\sec \zeta ) ,
\end{displaymath} (109)

で与えられる.

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\setcounter{footnote}{9}\fnsymbol{footnote} 99

0.12 長波放射

長波放射過程においては, 水蒸気とそれ以外の大気による吸収と射出のみを考慮する. 吸収係数の異なった$N_R$個の波長帯を 考える(k-distribution method). $F_R$は,

\begin{displaymath}
F_R(z) = \left( \pi B(T_g) - \pi B(T_s) \right) {\cal T}^f(z...
...,z_T)
- \int_0^{z_T} \DD{\pi B}{\xi} {\cal T}^f(z,\xi) d \xi
\end{displaymath} (110)

ここで, ${\cal T}^f(z_1,z_2)$は, $z=z_1,z_2$ 間のフラックス透過関数, $\pi B \equiv \sigma_{SB} T^4$ は放射源関数である.

フラックス透過関数, ${\cal T}^f(z_1,z_2)$は,

\begin{displaymath}
{\cal T}^f(z_1,z_2)
= \sum_{i=1}^{N_R} b_i
\exp \left( - \delta_R \vert \tau_{R,i}(z_1) - \tau_{R,i}(z_2) \vert
\right)
\end{displaymath} (111)

$\tau_i(z)$は, 大気上端を0とした光学的厚さであり,
\begin{displaymath}
\tau_{R,i}(z) = \int_z^\infty k_{R,i} \rho q dz
+ \int_z^\infty \bar{k}_{R,i} \rho dz
\end{displaymath} (112)

$k_{R,i}$ は波長帯 $i$ の水蒸気に対する吸収係数, $\bar{k}_{R,i}$ は波長帯 $i$ の水蒸気以外の大気に対する吸収係数である. これら吸収係数は$z$等に依存しない一定値を与える. $b_i$ は波長帯 $i$ の放射エネルギーの全体に対する割合であり, 一定値をとると近似する. また, $\delta_R = 1.5$ を用いる.



... 便利である.7
(2007-05-23 石渡) なんでだっけ?
... 8
(2007-05-23 石渡) agcm5 における変数 EQNORB. agcm5 のソースのコメントには昇降点黄経 と書かれていたけど, 正しいか?
... は以下の式で与えられる.9
(2007-5-23 石渡) 佐藤ノートでは式与えられていないようだ. この時角の式, 正しいか?

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Yasuhiro MORIKAWA 平成19年9月10日