接続詞
接続詞の定義
独立した先行文脈の内容を受けなおし、後続文脈の展開の方向性を示す表現
接続詞の役割
- 連接関係を表示する
- 文脈のつながりをなめらかにする
- 重要な情報に焦点をしぼる
- 読み手に含意を読み取らせる
- 接続の範囲を指定する
- 文章の構造を整理する
接続表現の機能分類表
論理の接続詞
原因–結果の因果関係、条件関係を前提とした論理的展開を予告する接続詞
順接
条件関係に従った帰結を予告する
だから、ゆえに
条件が確定したもの。原因–結果の橋渡しの役割。読み手の前提知識・常識にそった帰結。読み手の前提知識・常識に依存する。
- 日本語
- 文語的:したがって、ゆえに、よって、そのため
- 口語的:だから、それで
- 英語
- Therefore, …
- As a/the result (of …) …
- The result (of …) is that …
- Consequently, …
- in consequence
- Accordingly
- hence: 論理的で自然な脈絡
- thereby
- …, so that …
- (and) thus…
- That is the reason why …
- For this/that reason …
- For the reasons stated/mentioned above
- Because of A, …: A は理由を生み出すもの
- owing to
- 因果関係を表す動詞:
- 「引き起こす、もたらす」bring, cause, entail, have, lead, make, provide, result in
- 「作り出す」create, make, produce, yield
- 「ある結果を可能にする、うながす」allow, enable, help, leave, let, offer, serve
- その他 change, increase, decrease, reduce, surprise
それなら、それならば
条件が仮定のもの。仮定をもとに結果を考える。
- 日本語
- 文語的:それならば、すると、だとすると、だとしたら、さもないと、そうでないなら
- 口語的:それなら、そうすると、そうしたら、そうしないと
- 英語
- If so, …
- In that case …
- If …, …
- If we assume/suppose/accept …
- Let us assume/suppose …
- assuming…
- Suppose…
- We assume…
- Given that…
- Imagine …
- provided (that) …
- even if …
- … only if …
- on condition that …
- … depend on …
逆接
条件関係に反した帰結を予告する。
しかし
「だから」系の逆。
- 日本語
- 文語的:しかし、だが、それでも、ただし(先行文脈の一部を否定する場合)
- 口語的:しかし、だが、でも、ただし(先行文脈の一部を否定する場合)
- 英語
- but …
- however, …
- on the contrary, …: 全く反対の内容
- nevertheless …: 直前の内容に反すること
ではあるが
譲歩を表す。
- 日本語
- 英語
- although
- though
- even though
- While…: 文頭の場合
- Indeed …, but …
- It is true (that)…, but…
- in spite of that
- despite
ところが
強い意外感をもたらす。読み手の想定外の展開を予告する。
- 日本語
- 文語的:ところが、にもかかわらず
- 口語的:ところが、にもかかわらず、それなのに、なのに、そのくせ
整理の接続詞
ある話題について同レベルにある事柄を対等に並べて示す接続詞。箇条書きを文章化したもの。
並列
共通点・類似点のある事柄を並べる。
そして、また
添加の接続詞。
- 日本語
- 文語的:そして、また
- 口語的:そして、それから、また
「そして」には最後にひとつ重要な情報を付け加える役割がある。
「それから」「また」は and に近い。
- 英語
- A and B : AとBは質的に同格のもの。
- both A and B
- similarly
- likewise
それに、そのうえ
累加の接続詞。ダメを押す。
- 日本語
- 文語的:それにくわえて、そのうえ、そればかりか
- 口語的:それに、しかも、ひいては
「しかも」は同じ事柄を別の側面から突っ込むという役割がある。
- 英語
- Furthermore, …
- Moreover, …
- In addition (to …) …
- a/one further …
- other …
- another …
かつ、および
厳めしい顔つきで論理づけ。
- 日本語
- 文語的:かつ、および、ならびに
- 「AかつB」はAとBが同時に満たされる。
- 「Aならびに/およびB」はAとBが同時に満たされる必要はない。
- 英語
対比
相違点・対立点のある事柄を並べる。
一方、それに対して
二つの物事の相違点に注目。
- 日本語
- 文語的:一方、他方、それに対して、反対に、反面
- 口語的:逆に
- 「反対に」「反面」「逆に」は先行文脈の反対の内容がつづく。[強い制約]
- 「それに対して」対になっている必要がある。
- 「一方」対になってなくてもよい。
- 英語
- on the one hand, … on the other hand …: 同じ主題にたいして、異なる見方を示す
- …, whereas …
- while
- unlike
- but
- Instead of
- by/in contrast 同種のものの対比
- by/in contrast to
- … contrast with …
- Conversely
- oppositely
または、もしくは
複数の選択肢を示す。
- 日本語
- 文語的:または、もしくは、ないしは、あるいは
- 口語的:それとも
- 「または、もしくは、ないしは」二つの中からの選択。二者択一。
- 「あるいは」三者以上の中からの選択。表現されたもの以外の選択肢も含意。
- 英語
列挙
共通点・類似点のある事柄を順序・番号をつけて並べる。列挙を始めるまえに、「列挙を始めることを宣言」する必要がある。
第一に
文章の中の箇条書き。列挙される項目に時間的順序性のないもの。各項目が交換可能。
- 日本語
- 文語的:第一に、第二に、第三に
- 口語的:一つめ、二つめ、三つめ
- 英語
- A, B, and C
- (the) first, (the) second
- the last
- the former/latter
- one, another, still/yet another
- next
最初に
列挙される項目に時間的順序性または順位が存在。
- 日本語
- 文語的:最初に、続いて、その後
- 口語的:はじめに、ついで、その後
- 英語
- at first
- initially
- then
- later on
- finally
- in the end
- eventually
まず
列挙される項目に時間的順序性があってもなくてもよい。
- 日本語
- 文語的:まず、つぎに、さらに
- 口語的:まず、つぎに、さらに
理解の接続詞
先行文脈では理解しきれない内容を、後続文脈でわかりやすく示すことを予告する接続詞。
換言
先行表現をわかりやすく端的に言い換えることを予告する。推敲してもなお、二つの表現を残す必要があることを確認するべき。
つまり、すなわち
言い換えを正面からおこなう。端的な言い換えで切れ味をだす。
- 日本語
- 文語的:すなわち、つまり、ようするに、換言すると、いわば
- 口語的:つまり、ようするに、いってみれば、いわば、言い換えると
- 「言い換えると、換言すると」文字通りの言い換え。
- 「いわば、いってみれば」例えて言えば。比喩的・象徴的な表現に言い換え。
- 「すなわち」イコールの意。客観的な言い換え。
- 「つまり」わかりやすい表現に言い換え。たいてい短くなる。
- 「ようするに」核心・要点に重きをおいた言い換え。
- 英語
- In other words, …
- …, that is …
- …, or …
- The point is that …
- What is important in … is that…
- namely: すでに(曖昧または間接的に)述べたものを名指ししたり、具体的にしたり、同じものであることを述べる。
むしろ
先行表現を一旦否定しておいて、よりよい表現を示す。側面からの言い換え。否定することで表現をしぼる。
- 日本語
- 文語的:むしろ、かえって、いな、そのかわり、かわりに
- 口語的:かえって、そうではなくて、というより、というか、かわりに
- 「むしろ、かえって」一見常識的・直観的な内容を否定して、じつは常識・直観に反した内容のほうが妥当だということを示す。必ず根拠とセットで用いる。
- 「かわりに、そのかわり」代わりのもので埋め合わせる。
- 「いな、そうではなくて」既に言った内容を否定して、修正の内容を続ける。
- 英語
例示
先行文脈が理解出来るように具体的な例を示すことを予告する。
たとえば
現実にあり得そうな具体例。抽象と具体の往還を助ける。
- 日本語
- 文語的:例えば、具体的には、実際、事実
- 口語的:例えば、具体的には、実際、事実
- 「具体的には」具体例が一つに(またはこれから挙げるもの)限られる場合。
- 「例えば」書き手の判断が入らない確定した内容。
- 「事実、実際」事実によって論拠を示す。
- 英語
- an example of … is …
- for instance
- … such as …
- … like …
- Consider …
- namely
とくに
とくによく当てはまりそうな例。特別な例で読者を惹き付ける。典型的な例。
- 日本語
- 文語的:とくに、とりわけ、ことに、なかでも
- 口語的:とくに、とりわけ、ことに、なかでも
- 英語
- for example, …
- especially
- particularly
- in particular
補足
先行文脈で不足していた理由や条件を補うことを予告する。
なぜなら
理由を補足する。日本語では使わないほうが洗練した文章になる。ただし、英語では結果–原因の順で述べることが普通である。
- 日本語
- 文語的:なぜなら〜からである、なにしろ、というのも、というのは
- 口語的:だって、なぜかというと、なにせ、
- 英語
- … because …
- The cause of … is …
- What makes … is …
- The reason for A is
- The reason why … is …
- Since :読み手もすでにわかっているだろうと思われることを理由として持ち出すときに使う.
- This is caused by
ただし
関連した不足情報を補う。限定を加える。例外を示す。
- 日本語
- 文語的:ただし、なお、もっとも
- 口語的:ちなみに
- 「ちなみに」直接関係はないが読者の興味を引きそうな情報。
- 「ただし」先行文脈の成立を保証するために必要な条件を補う。
- 「もっとも」先行文脈に対する注意。
- 「なお」本筋から外れるけれども必要な情報。
- 英語
- Here, …
- …, where …
- as long as …
- incidentally
- alternatively
- aside/apart from: 例外は重要でないという意味合い
- excepting: 例外を別にすれば成り立つという積極的な主張。
- except for: 例外の存在を強調
- It is noteworthy/notable that
- Note that
展開の接続詞
話の本筋を切り替えたり、まとめたりする接続詞。文章の全体構造に関わる大きな接続。
転換
話の大きな切れ目を示し、その後の展開がどうなるかを予告する。
さて
別の話題を持ち込むことを予告する。周到な準備のもとにさりげなく使われる。
- 日本語
- 文語的:さて、ところで、それにしても、それはさておき
- 口語的:ところで、それはそうと
- 「さて」書き手が準備していた話題に持ち込む。
- 「ところで」自由な連想に基づく転換。
では
話の核心に入ることを予告する。
結論
それまでの話をまとめ、最終的にどのような結論になるかを予告する。
このように
それまでの内容をふまえて結論を導くことを予告する。すなおに文章をまとめる。総括。
- 日本語
- 文語的:このように、このようにして、かくして、結局、以上
- 口語的:結局
- 英語
- in conclusion
- as a conclusion
- to conclude
- finally
- to sum up
- in sum
- in summary
とにかく
多様な議論に(強引に)とりあえず決着をつけて結論を出す。論理性に欠ける表現。
- 日本語
- 文語的:とにかく、いずれにしても、いずれにしろ、
- 口語的:どっちみち、どっちにしても
- 「いずれにしても」はAであってもBであっても同じ結論にたどりつく場合は、論理性が高い。
- 英語