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: 3.4 静的安定度 : 3 木星の水雲を想定した計算例 : 3.2 乾燥断熱温度減率

3.3 湿潤断熱温度減率

Fig.6 において, case2 ($T = 300$ K)での 湿潤断熱温度減率をモル比の関数としてプロットする. 凝縮成分のモル比を増加させると 相変化に伴う熱の解放によって湿潤断熱温度減率はしだいに小さくなる. しかしモル比が 0.1 を超えたあたりから分子量変化の効果 ($M$ $M_{d} = 2.323 \times 10^{-3}$ から $M_{d} = 18 \times 10^{-3}$ まで変化)のために値が増加に転じる.

相変化に伴う熱の解放の効果を見るために, (33)式の右辺の $(1 + \lambda X/ RT)/ (1 + {\lambda }^{2}X / c_{p} R T^{2})$ をプロットす る(Fig.7 参照). モル比を増やしていくと値が小さくなっていくが, モル比が 0.1 を超えるあたりからは最大値に漸近するようになる.

(50)-(53) で 示したように, 木星大気において凝縮成分が多いとする条件 (38) は現実的ではない. しかし, モル比が $1.0 \times 10^{-1} \le X \le 1 $ 程度の場合に成立する 近似式を作れないわけではない. その場合は (53) の み成立することを考え,

$\displaystyle \DD{T}{z} \approx - \frac{M_{d} g R T^{2} }{\lambda^{2}}
\left\{
...
...\frac{ \lambda }{R T}
+ \frac{(M_{v} - M_{d}) \lambda X }{M_{d} R T}
\right\}
,$     (54)

とすればよい. (54) を Fig.8に示す.

Fig.9 には, case1-case4 の場合として, 温度 $T$ を変化させた場合の湿潤断熱温度減率を示す.

図 6: $T = 300$ K での湿潤断熱温度減率. 凝縮成分のモル比を増加させると 相変化に伴う熱の解放によって湿潤断熱温度減率はしだいに小さくなる. しかしモル比が 0.1 を超えたあたりから分子量変化の効果 ($M$ $M_{d} = 2.323 \times 10^{-3}$ から $M_{d} = 18 \times 10^{-3}$ まで変化)によって, 値が大きくなる. 赤線; 近似なし((33) 式)を用いた場合. 緑線: 凝縮成分の少ない近似((37) 式) を用いた場合. 青線: 凝縮成分の多い近似((39) 式) を用いた場合.
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm]{ps/LapseRate.ps}
\end{center}\end{figure}

図 7: $(1 + \lambda X/ RT)/ (1 + {\lambda }^{2}X / c_{p} R T^{2})$ の プロット. 赤線; 近似なしの場合. 緑線: 凝縮成分の少ない条件((36) 式) が成立する場合. 青線: 凝縮成分の多い条件((38) 式) が成立する場合.
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm]{ps/EffLatentHeat.ps}
\end{center}\end{figure}

図: $T = 300$ K での湿潤断熱温度減率. 赤線, 緑線, 青線は Fig.6 に同じ. 紫線: (54) 式を用いた場合.
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm]{ps/LapseRate2.ps}
\end{center}\end{figure}

図 9: 温度 $T$ を変化させた場合の湿潤断熱温度減率. 緑線は case1 ($T=200$K), 赤線は case2 ($T = 300$K), 青線は case3 ($T=400$K), 紫線は case4 ($T=500$K).
\begin{figure}\begin{center}
\Depsf[120mm]{ps/LapseRateList.ps}
\end{center}\end{figure}


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: 3.4 静的安定度 : 3 木星の水雲を想定した計算例 : 3.2 乾燥断熱温度減率
SUGIYAMA Ko-ichiro 平成17年8月21日